ホーム > 寺院めぐり > のんびり行こう ぶらりお寺たび > Vol.3 北海道 松前・函館・旭川 北の大地に息づく信仰を訪ねて

バックナンバー
のんびり行こう ぶらりお寺たび 〜月刊「旅行読売」編〜
のんびり行こう ぶらりお寺たび 旅で出会った名刹で日蓮聖人の教えに触れる。そっと手を合わせ、癒やしのひとときを。

Vol.3 北海道 松前・函館・旭川 北の大地に息づく信仰を訪ねて

 日蓮宗六老僧のひとりで、海外開教の祖とされる日持上人は、津軽海峡を渡り北の大地へと布教を進めた。ゆかりの寺で、その歴史に触れる。

北海道開教の地・松前に佇む宗門史跡

 北前船の着岸石(波止場跡)が残る城下町・松前。津軽海峡の先には青森の竜飛岬が見える。その海を見下ろす高台に法華寺は立っている。
 日持上人を師と仰ぐ日尋上人が、法華堂を松前に建てたのが大永元年(1521年)のこと。松前藩発足の江戸時代には徳川幕府の蝦夷祈願所として庇護を受け、後に日蓮宗布教統括寺院の役割も担った。
 山門は松前藩の関所から移築したもの。本堂は煉瓦色の瓦が映える総欅造りの堂々たる佇まいだ。明治19年に地元の豪商、吉田三郎右衛門が寄贈した“鰊御殿”とも言える建造物である。元弘元年(1331年)に日像上人、大覚僧正が造立したと伝わる願満日蓮大菩薩像が今に残る。日蓮聖人像としては池上本門寺の祖師像に次ぎ、全国で2番目に古い。
 松前は本州に最も近く、道内で一番暖かい土地。しかし開拓の歴史の中には先住民との争いがあり、それゆえに平和への願いや豊漁祈願など、現世を幸せに生きたいという人々の思いが普及を広めたのだろう。
 日持上人の北海道開教の地としての歴史や、奥羽地方にある寺院への情報発信拠点としての役割から、法華寺は平成20年に「宗門史跡」に指定された。

往時の栄華をしのぶ法華寺の祖師堂。彫刻を施した破風が見事
法華寺に奉安される願満日蓮大菩

北海道新幹線開業で賑わう函館を歩く

 伊豆の下田と並び、嘉永6年(1853年)の日米和親条約による開港の歴史を持つ函館。人とモノの交流拠点となった外国人居留地を中心に、新しい町がつくられ、特に元町・大三坂(だいさんざか)界隈は、寺院や教会、和洋折衷の町家が点在し、異国情緒が漂う。
 その一角に實行寺はある。養稟日定(ようりんにってい)法師の要請で明暦元年(1655年)に清寛上人が箱館山麓に草庵を結び、その後、日浄上人が寺を建立。境内の中央に日持上人像が立つ。本堂から歩いて15分、函館山の中腹には御経石(ごきょうせき)がある。御経石は、永仁3年(1295年)に日持上人が箱館山山頂の岩壁に御題目を記したものと伝わる。日持上人はこの後、中国へと海外布教の旅へ。
 今なお国内外から参拝者が訪れるのは、實行寺が開国の歴史舞台となったためだ。アメリカ海軍写真班の寄宿舎やフランス海軍疾病水兵の養生所となり、安政5年(1858年)には箱館ロシア領事館にもなった。そして明治2年の箱館戦争終結時、当時の住職だった日隆上人が、町中に野ざらしになった旧幕府軍の戦死者を引き受け、埋葬した。国籍や地域に関係なく人々を受け入れた歴史がある。
 境内の日持上人像は、昭和27年の立教開宗七百年記念法要の際に、信仰が篤かった梅津福次郎氏の意志を継いだ梅津タケ子夫人により建立された。福次郎氏は身延山の修行道場である信行道場の設立者としても知られる。
 坂の町である函館は、夜景の美しい町として知られる。函館山をはじめ、絶景スポットが点在する。その光の一つ一つが地域の暮らしの明かりだと思うと、夜景は平和の町の象徴に感じる。

實行寺には日持上人像と日仏友好の石碑がある
實行寺にある妙見堂には、函館北洋漁業の礎を築いた高田屋嘉兵衛家から預けられた北辰妙見菩尊像も祀る

大雪山系の恵みを受ける街で名刹巡り

 さらに北辺布教として重要な地・旭川へと足を延ばす。旭川は札幌に次ぐ、北海道第二の都市である。明治29年に屯田兵を母体とする「第7師団」が編成されて以降、街は飛躍的な発展を遂げた。旭川は北海道開拓と北辺警備の重要拠点であった。
 妙法寺は明治30年に日蓮宗説教所として開かれた。尽力したのは、日蓮宗の信奉者だった阿部格太郎氏である。その前後には消防団の設立、小学校の開設、鉃道誘致などを行っている。説教所には函館實行寺からの縁で菱谷寿延住職が赴任。説教所開設1年後に、釋英儀上人が妙法寺を開創。本堂が建立された。本堂には御本尊、稲穂紋が描かれた最上位経王大菩薩、◎子母神を安置(◎印は、鬼の上の点がない字)。境内には馬頭観音も祀る。
 旭川は都市であり農業の町。妙法寺は、豊作や経済発展祈願の場である。さらに、町の歴史とともに歩んできた同寺は、地域の魅力を伝える発信拠点としての役目も果たしている。
 旭川には、旭山動物園などの観光名所のほかに、大雪山系の恵みを受けたグルメも満載だ。地酒や多彩な農産物、名物の焼き鳥(新子焼き)、そして日本海やオホーツク海から届く新鮮な魚介を使った料理が、“お寺たび”を素敵に演出する。

旭川四条駅から徒歩6分にある妙法寺。入り口にある日蓮聖人像が旭川の町を静かに見つめる
心休まる空間が広がる妙法寺の本堂
  • 宗門史跡 妙光山 法華寺(みょうこうざん ほっけじ)松前町豊岡258 tel.0139・42・2068 9時〜17時 境内自由 拝観無料
  • 一乗山 實行寺(いちじょうざん じつぎょうじ)函館市船見町18-18 tel.0138・22・0341 9時〜17時 境内自由 拝観無料
  • 延壽山 妙法寺(えんじゅざん みょうほうじ)旭川市六条通19-右1 tel.0166・31・3317 9時〜17時 境内自由 拝観無料