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日蓮宗メールマガジン8月号

【今月の法話】

日本の男子マラソンランナーに君原健二さんという方がいらっしゃいます。
この方は、東京、メキシコ、ミュンヘンと3度のオリンピックに連続出場し、良い時では銀メダルを獲得したり、その他にも、国内外の数々の大会で優勝を収めるなど、日本男子マラソン界で最も実績を残した選手と言われています。

77歳となられた現在は現役を引退されて、人々に走ることの喜びや楽しさを伝えるべく全国を走り回っておられます。
今は自分の好きなペースでゆっくりのんびりと走って、走りながら山や海の風景を眺めたり、鳥のさえずりや波の音を聞いたりしながら「五感で楽しむランニング」を人々に伝えているそうですが、現役時代、競技としてマラソンと向き合っていた時は、走ることが楽しい、面白いと感じたことは一度も無く、苦痛でしかなかったそうです。

君原さんはマラソンの大会に出場して走っていると、毎回もう辛くて辛くて途中でやめたい、棄権してしまいたいと必ず思うそうです。オリンピックに出場するような選手でもそのように挫けそうになるのですから、マラソンというのは本当に過酷な競技なのだなと思いますが、そんなとき君原さんは、ある方法を取っているそうです。

辛くて辛くて仕方がないが、「ゴールまで頑張ろう」という目標ではゴールが遠すぎて、とてもじゃないが心が持たない。
だから「あと5キロだけ頑張ろう」と自分に言い聞かせる。
それでも辛ければ、「あと1キロ頑張ろう」「あと500メートル頑張ろう」と、どんどん目標を小さくし、身近なところに目標を据えて走るそうです。

そして最終的には「あの電柱まで頑張ろう。あの電柱まで行ったらもうやめてしまおう」と言い聞かせ、実際にその電柱までたどり着くと、次の電柱を見て「やっぱりもうひとつ先のあの電柱まで走ろう。あそこまで行ったら今度こそ本当にやめよう」と言い聞かせて走る。
そういうことを繰り返して「次の電柱」という小さなゴールを積み重ねていくうちに、いつの間にか42.195キロという距離を完走できるのだそうです。

君原さんは現役時代、通算54回マラソンに出場していますが、途中棄権をしたことは一度もありません。

身近なところに目標を置き、小さな事でも良いので、出来ることからひとつひとつ積み重ねていく。私たちもここから生きるヒントを得られるような気が致します。
そして何より、一度走り始めたらどんなに苦しくてもゴールまで走りきるという君原さんの強い精神力を私たちも見習いたいものです。

日蓮聖人は、『随自意御書』という書物の一節に於いて、
「一滴のわずかな露も集まればやがて河となる。河も集まると大きな海となる。小さな塵も積もれば山となり、山も重なると須弥山のような巨大な山となる。これと同様に、小さな事でも積み重ねると大きな事となるのである。」と仰っておられます。

大きな目標を持つのは素晴らしいことですが、漠然と目標を掲げるだけではいつまで経っても叶いません。その目標達成に向けて今自分が出来ること、目の前の小さな目標を一つ一つ達成していくことが何よりの近道なのではないでしょうか。

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

3日 月例金曜講話
13日 お盆迎え火
15日 戦没者追善供養(於・千鳥ヶ淵戦没者墓苑)
16日 お盆送り火
27日 松葉谷法難会
28日 いのりの日