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日蓮宗メールマガジン10月号

「他と調和する自我」

10月に入り秋もぐっと深まってきました。秋といえば食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋、行楽の秋など◯◯の秋とよく言われます。皆さまはどのような秋をお過ごしでしょうか? 
私はもっぱら食欲の秋を堪能しております。1番の好物は卵ですが2番目に大好きなものはお豆腐。ちょうど10月2日は語呂合わせから「豆腐の日」と言われるそうで今月は豆腐から学んでみたいと思います。

「豆腐」 荻原井泉水
「豆腐ほどこの世の中でよくできたものはない。形は四角四面だがカチカチではない。世の中には煮ても焼いても食えないという言葉はあるが、豆腐はそのままでもおいしいし、煮ても焼いてもおいしい。〜中略〜 与えられた時、場所、相手に応じて適応し、しかも相手をも生かしてゆく。これはひとえに豆腐に自我がないからである。その元を尋ねれば、大豆の時には重い石臼に粉々にされ、途中でニガリなど他の物と混ぜ合わされ、最後に細かい布の目からギューッと絞り出されるというように散々苦労してきている。だから、どんな場所に置かれても恥じらうこともないしその身をてらうこともなく自然に他と調和することができる。本当に大したものだ。私はとても豆腐の足元にも及ばない」
豆腐の特徴を見事に捉えている文章だと思います。作られる過程で苦労をしてきたからこそ、自然に他と調和する事ができる。そして井泉水は、そんな豆腐の味を「自我がない」と表現しています。私はその真意を、仏様の教えに照らして尋ねてみたいと思います。
よく、豆腐には味がないと言われますが、もちろんそんな事はありません。大豆の甘みが凝縮された豊かな味わいがあります。ですから、ちゃんとした自分の味を持っているのです。しかし、その味が他の味を侵す事なくむしろ引き立てるからこそ「本当に大したもの」なのでしょう。苦労に苦労を重ねて凝縮された豊かさ。その豊かさが「自然に他と調和する」自我なのだと思います。
人もまた同じです。御年を召された方が何事にも動じず「構いませんよ、結構ですよ、えぇ」と仰っているのを聴くと、そこに苦労を重ねた人生の豊かさを感じます。とはいえ、その一つ一つの苦労を自分一人の力で乗り越えていくのは大変な事です。
 お題目を一心にお唱えし「自然に他と調和」できる力を共に養いましょう。
豆腐の柔かな香りを楽しみながら、そんな事を感じる秋のひとときです。

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

4日 月例金曜講話
10日 佐渡法難会
13日 宗祖御会式
28日 いのりの日
31日 加行所修法先師講