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日蓮宗メールマガジン11月号

「忘れ物」

早いもので11月、今年もあと二か月となった。

私の地方では月遅れのお会式が11月になると各お寺で営まれている。

日蓮聖人のご遺徳を、日蓮聖人の事を強く感じる時期でもある。

日蓮聖人のお手紙で大好きなお手紙がある。

忘持経事である。

日蓮聖人、御年55歳のとき。

檀越である富木常忍の母が建治二年二月下旬に九十歳を超えて亡くなった。

富木氏は、その菩提を弔うため亡き母の遺骨を首にかけ、翌三月に下総から、日蓮聖人のおられる身延の山に、追善供養をお願いしにはるばる訪れた。
御宝前にお釈迦様の御尊顔を拝し、懇ろに母の供養をしていただいた後、富木氏と聖人とで母を偲んでの語らいがあったかもしれない。

心ゆくまで亡き母の供養の仏事を営んだ富木氏は身延を去っていったのであった。

しかしながら、供養ができたことで心の苦しみが止み、歓びが身に余って、心に緩みが生じたのか、帰りに、大切な常に携行している持参したお経本を忘れてしまった富木氏。
そのために日蓮聖人は、直ちにこの手紙をお書きになり、修行中のお弟子に持たせて遣わしたのである。

お手紙の中で、故事を交えて「日本第一の好く忘るる仁か」とユーモア交りに教訓し、諸宗が釈尊の本意を忘れたことを批判するのは流石は日蓮聖人。

最後には生前から母への孝養を怠ることなく、母の死後は遺骨を身延までもって懇ろな供養を捧げた富木氏を日蓮聖人は讃えておられる。

持経を忘れたとはいえ、供養の喜びで富木氏は持経を忘れられた。

ここで重要なのは供養によって信仰的な喜びを感じられた富木氏と供養を受けた側の亡き富木氏の母親の両方の成仏を日蓮聖人は述べておられるところである。

ついつい視野にはいっていない供養する側の成仏、両方の成仏があっての法華経の供養なのであり、それが重要なのである。さて地方によってはお会式のある11月、普段の仏事でも忘れてはいけないよと、この時期になり日蓮聖人から改めて教えていただいているのかもしれない。

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

1日 月例金曜講話、加行所入行会
11日 小松原法難会
13日 日像上人会
28日 いのりの日