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日蓮宗メールマガジン11月号

「ミマチガエルをミチガエルへ」

季節はすっかり秋となり、私の住む関東も少しずつ紅葉が始まりました。
お参りに来る方も思い思い紅葉を眺めながらお寺の山を登ってこられます。
むかしむかし2匹の蛙もあるお山を一生懸命登っていたそうです。

ここから遥か西の京都に、1匹のカエルが住んでおりました。ある時、大阪見物をしたいと思ったそのカエルは、ノソノソノソノソとやっとの思いで京のはずれの天王山までやってきます。一方、大阪からも、京都見物をしようと天王山に登ってきたカエルがおりました。
「やあ、あんたもお隣の都を見物にきたのか!」
山頂で鉢合わせた2匹のカエルは互いにその夢を語り合いました。
「こんなに骨を折ってやってきてもまだ半道だ。これから都まで行ったらヘバッちゃうな。さいわいここは天王山の頂上だから、背伸びをすればお互い京・大阪を見渡せるんじゃないか」
そうだそうだ、と意気投合した2匹は、さっそくピーンと背を伸ばし、期待に胸をふくらませて遥かかなたを眺め合いました。すると京都のカエルが言いました。
「ナーンダ。音に聞こえた大阪も、見れば京都と何もかわらないじゃないか!」
今度は、大阪のカエルが言いました。
「こっちもだ。花の都と言うけれど、京都も大阪とまったくおんなじだ!」
ガッカリした2匹のカエルは、ノソノソノソノソと見物せずに帰りましたとサ。
はてさて、これは不思議なことに…。実は、カエルの目は背中の方についています。彼らが眺めた都は、なんのことはない、自分が住んでいる都だったのです。

一生懸命見ているつもりでも“目のつけどころ”が違っていては、まさに“ミマチガエル”です。ともすれば、私たちは自分が見ているもの・考えているものが全てだと思い込んでしまいますが、はてさて、それはどこまでアテになることやら…。
山を彩っているのは紅葉だけでしょうか。もしかしたら他にも…それを見つけられる眼になれたら、きっと私たちの人生も“ミチガエル”かもしれませんね。
平成最後の紅葉が、皆様の人生にも彩りを添えてくれますように。
【引用】
江戸後期の心理学者 柴田鳩翁の講話集
『鳩翁道話』
「天王山のかえる」

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

11日 小松原法難会
13日 日像上人会
28日 いのりの日