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宗務院からのお知らせ

宗務院

2013.02.12

第2回 地域社会とお寺の活性化アイデアコンペティション結果発表

主催者より

昨年度に引き続き、〈地域×コミュニティ×お寺の活性化〉をテーマとして、平成24年10月1日~12月10日まで、『地域社会のためのお寺の活用アイデア』を募集しました。幅広い年代、職業、地域から、たくさんの素敵なアイデアをご応募いただきまして、誠にありがとうございました。

ここ数年来、コミュニティの崩壊や地域における絆の欠如が懸念されていますが、応募作品の中には、みんなで地域社会を盛り上げたい!そのためにお寺がこうあって欲しい!という皆さまの熱い想いがたくさん込められており、お寺のあるべき姿を皆さまと一緒に考える貴重な機会となりましたこと、大変ありがたく存じます。

人口減少や高齢化社会、家族のカタチの変化など、ライフスタイルが変容する時代だからこそ、檀家制度だけにとどまらず、地域社会に根ざした、人々の生老病死に寄り添う公益性がお寺に求められています。

お寺が「地域の縁側」となれるように、これから皆さまからいただいたアイデアとお寺が出会い、一つでも多くのアイデアが実現することで、地域社会とお寺が活性化し、日本中にたくさんの笑顔が生まれることを切に願っています。

 

以下の通り、審査の結果、受賞者が決定いたしましたので発表いたします。

 

第2回 地域社会のためのお寺の活用アイデア募集

【応募総数】409通

【審 査 日】平成25年1月17日

【審 査 員】清水 愼一氏(立教大学観光学部特任教授)

       西出 勇志氏(共同通信編集委員兼論説委員)

                  のかた あきこ氏(旅ジャーナリスト)

       中條 暁仁氏(静岡大学教育学部准教授)

【審査基準】 ・社会への公益性

       ・アイデアの独創性・実現性

       ・(地域・お寺への)活性化の効果

【受賞作品】

大 賞

古地図から始まる『お寺はふるさとの生き証人』プロジェクト
資料

応募者:岡田 英昭さん(神奈川県、会社員)

【審査員からのコメント】

   ・寺院の大きな特色である空間性、歴史性を前面に押し出したアイデア。

一見、地味な印象も受けるが、具体性や公共性も備えていてさまざまな寺院が取り組みやすく、寺院活性化コンペの審査基準に照らし合わせると、最も大賞にふさわしい作品だと考えました。このアイデアには地域の人々を巻き込む力も感じました。

・寺院を「地域住民と町の歴史をつなげる場所」として捉えているところが素晴らしいと思います。「古地図による町の案内板を設置する」「古い写真の提供を呼びかける」など、全国どこでも、すぐにはじめられる取り組み。町の歴史を紐解くことで、地域に愛着が生まれたり、もしくは課題などが見つかるきっかけになります。古い地図や写真を題材にして、土地の長老に昔話を伺うイベントなどにもつながるといいなと思いました。

・お寺に残る古地図一枚さえあれば気軽に取り組めるという汎用性が、本作品の特徴といえます。古地図は50年前の地図でも構わないと思います。現代の地図と比較することによって変わるものや変わらないものを発見し、そこから地域の良さ、あるいは課題を寺院と地域住民が共に考えていくことが大切なのだと思います。学校教育的効果や社会教育的効果も期待できます。

 

優秀賞

まちのこ隊
資料

応募者:仲村 明代さん(福岡県、フリーランス)

【審査員からのコメント】

・まず、「まちのこ隊」というネーミングが可愛らしいと思いました。高校生、大学生を中心とする「まちのこ隊」が、地域における自分達の役割を知ることができる素晴らしいアイデア。重いもの移動、道路の掃除、宿題のサポートなどの具体案が出されていて、体力や気力、好奇心にあふれた若者だからこそ、その力が生かされる素敵な交流が生まれるように感じました。

・若者による町の見回りを寺院を基点としてシステム化したアイデア。防犯、防災、高齢者対策の一助になると思います。

・寺院を介して地域社会における互助(助け合い)を再生し、実践しようとする試みです。お寺がボランティアの地域住民をコーディネートするという点がポイントではないでしょうか。この種の活動は社会福祉組織においても取り組みが進んでいますが、地域社会に根ざした寺院や住職が関与することによってローカルできめ細やかにニーズに対応することが期待される提案です。

 

優秀賞

一畳から始まるコミュニティ
資料

応募者:岩田 翔士さん(愛知県、学生)

【審査員からのコメント】

・寺に人を呼び込むのではなく、寺を持ち出す発想、特に融通無碍に広がる「畳」に着目した発想力に感心しました。公共空間に「寺」が進出しても違和感がなく、地域の人が小さな空間を組み合わせるアイデアを持ち寄ることで、寺をキーワードにした町の新たな特徴が生まれる可能性も秘めています。他宗派の寺院との連携を模索することができる点も高く評価したいです。

・一畳というスペースを共有することによって、街中にお寺のような空間をつくり出すというアイデアは面白いです。小さな空間に地域を語れる&地域を語りたい人が集まることで豊かな時間が生まれます。また、1畳から8畳まで、空間を少しずつ広げることで作り出される交流の、様々な可能性を感じました。

・「お寺から始まる地域づくり」といえる提案だと思います。各寺院がそれぞれ可能な活性化を実践し、それを核にしながら地域住民を巻き込むことによって地域社会全体の活性化につながるというアイデアになっている点が評価されます。一見、それは当たり前のことですが、実は最も大切なことであることを気づかせてくれました。タイトルも斬新で視覚的にとらえやすいものとなっています。

 

優秀賞

Flower Party=BuddhistMasはスイーツの祭典!で地域活性化!
資料

応募者:原澤 雅和さん(神奈川県、自営業)

【審査員からのコメント】

・花祭りを仏事としてのみとらえるのではなく、甘茶供養になぞらえて甘味(スイーツ)の祭典としてとらえようとするユニークな提案です。世間はクリスマスで大いに賑わうのだから、お寺も花祭りで賑わってほしいという願いが込められています。花祭りは4月8日。新年度がスタートする時期でもあります。お寺から元気を人々に分け与える明るい提案として評価できました。

・花祭りを幅広い層向けにした仏教イベントで、特にスイーツに着目して女性をターゲットにしたアイデアが斬新、かつ実現性も高い。

・B-1ご当地グルメの祭典をはじめ、ソウルフードによる地域おこしは昨今、莫大な経済効果と交流をもたらしています。ここではグルメのテーマをスイーツにし、花祭り(降誕会)に関連づけているところがいいと思いました。春の喜び、お寺の意義などが自然な形で学べる企画。女性や若者に注目されるでしょう。

 

入 賞

お坊さんと晩ご飯~専門家と連携した“気軽な相談相手を目指して~
資料

応募者:Keitaroさん(東京都、リサーチャー)

【審査員からのコメント】

・街の食事処を舞台にして、お坊さんが地域住民と語り合う時間を演出するアイデア。ひとりひとり、一軒一軒という丁寧なつながりが、強いコミュニティを生み出す起爆剤になるのかもしれません。

・僧侶が中核となって地域社会に専門家のネットワークを構築し、悩みを抱える人々と飲食をともにしながら解決法を模索する営みに本提案のオリジナリティがあると思います。僧侶が担ってきた本来の役割を見つめなおし、現代社会にそれを活用する試みは大いに期待されるところです。

・寺院よりも僧侶にフォーカスし、現代は僧侶を必要としている時代ととらえています。僧侶と一般の人をつなぐ手軽なツールとして「晩ごはん」を選択したのも興味深い。

 

入 賞

「車座(くるまざ)空間から始まる「つながり」プロジェクト
資料

応募者:松橋 佳奈子さん(愛知県、団体職員)

【審査員からのコメント】

・寺院が人を呼び込もうとする際、規模や立地条件などでそれぞれに状況が大きく異なります。そんな中、「車座」という型を打ち出し、そこからつながりを広げようとするコンセプトに汎用性の高さを感じました。ハード面、ソフト面、それぞれでさまざまなアイデアを膨らませることができ、寺での集いの可能性が広がるでしょう。イマジネーションを喚起する高い発想力を評価したい。

・お互いの顔が見え、そして全体が見渡せる「車座」の空間を活用するアイデア。焚き火、朗読会、演奏会など、様々な取り組みが提案されています。交流を目的とし、情報発信をテーマにしていますが、お寺だからこそ生きる+アルファの案があるとより素敵になると思いました。

・地域社会での人々のつながりが薄らいでいる現代ですが,お寺の境内に人々が寄り集まる空間を作り出すことで絆を取り戻すという意図がこの作品にはあります。きわめてシンプルな取り組みが評価されました。

 

入 賞

コミュニティセンターと循環小型バス
資料

応募者:大石 知典さん(大阪府、コールセンター)

【審査員からのコメント】

・お寺と地域を結ぶ、循環小型バスの提案。ぜひ実現してほしいアイデアだと思いました。交通アクセスなどの環境が整えば、人、モノ、空間が素敵につながるはず。お寺を、伝統と伝達の場に考えている点もよいと思います。行政との連携が求められます。

・流通システムに着目し、寺院をキーステーションとした地域活性化を構想した興味深いアイデア。実現するためには資金面、行政との折衝を含めてクリアすべき点が多いが、寺が地域全体と一体的にかかわるための具体的アイデアが満載されていることを高く評価したい。

・コミュニティセンターという機能を寺院に付与することは、寺院が地域的に有してきた社会的結節機能を再評価するものといえます。本作品のオリジナリティは、利用者等の輸送手段にまで配慮しているという点です。特に過疎地域では、高齢者を中心に移動手段を個人的に所有しない人が多いので、人やモノの輸送を兼ねるバスの存在は大きいように思います。過疎バスに当該寺院を経由してもらえればクリアできるのではないでしょうか。

 

子ども特別賞

ご応募いただいた作品の中で少年少女の皆さまからとても夢のあるアイデアをいただきましたので、「子ども特別賞」として表彰いたします。

※後日、記念品をお送りいたします。

 

参加賞

409通すべての作品を賞し、参加賞として、記念品をお送りいたします。

たくさんのご応募、誠にありがとうございました。

※後日、応募者全員に参加賞を順次お送りいたします。

 

総 評

清水愼一 審査員

今回初めて審査に参加させていただきました。審査をして一番印象に残ったことは、地域住民が寺や住職に対して地域の中心としての役割を大いに期待しているということでした。その期待の中身は応募者により様々ですが、コミュニティの崩壊や地域の絆の希薄化が懸念されている日本社会において、昔のようにお寺さんにはコミュニティや地域の絆の中核であって欲しいという思いは共通していました。そのような期待にどう応えていくかという観点で、私は以下の点を重視しました。

一つは、寺や住職がコミュニティや地域の絆の中心として、具体的に今すぐにできるという観点。すなわち、考え方や一般的な提案ではなく具体的に実施できることを重視しました。二つは、すぐできることといえば境内をイベントなどの場に提供することが手っ取り早いですが、それだけではなく寺が住職と地域住民あるいは地域住民同士の対話の場になることを重視しました。三つは、コミュニティや地域の絆の崩壊をもろに受けているのが地域の子どもたちとお年寄りであることにかんがみ、子どもたちとお年寄りを対象にした提案を重視しました。四つには、やはり寺には宗教的にも精神的にも真の寺らしさを追求して欲しいという自分自身の思いを重視しました。

以上の観点から選びましたが、私自身あちこちのまちづくりのお手伝いをしているとはいえ、お寺さんとの関係がそんなに深くないために、寺が置かれている状況などについて十分知らずに審査会に推薦したものもあったかと思います。引き続き、いろいろなまちづくりの現場でお寺さんに関わりながら実践を積んでいきたいと思います。ご指導いただければ幸いです。

 

西出勇志 審査員

寺院活性化への取り組みを真摯に考えた作品が多く、審査員自身、興味深く一つ一つの作品と向き合うことができて大きな刺激を受けました。ただ、コンペが2回目ということもあり、アイデアがいくつかの傾向に収斂され、広がりが少なかった点が残念。既に行われているアイデアも多かったです。

審査基準である実現可能性とアイデアの独創性、公共性、それぞれ一つずつの基準においては質の高さに唸らされるものがいくつもあったが、基準をすべてをクリアする難しさを実感しました。来年以降に期待したいと思います。

 

のかたあきこ 審査員

第1回の倍以上の応募総数があり、その中には大学の授業で取り上げられるなど、地域におけるお寺への関心度の高まりを感じました。寄せられたアイデアのベースにはどれも、交流、学び、豊かさへの期待があり、それを実現させるための方法が全国の幅広い世代から寄せられました。

 食をテーマにした交流アイデアや、図書館や児童館など寺子屋的発想が多く見られる中で、個人的に興味を引いたのが、今回多く集まった防災拠点としてのお寺のあり方でした。防災につながるアイデアには「町を知る」「歴史を学ぶ」「住民同士が声をかけあう」「緊急時の情報発信」などが含まれていました。東日本大震災の辛い経験を教訓として生かしたいという思いの表れだと感じました。

 どのアイデアからも、お寺に対する期待が感じられました。ひとつ欲を言えば、お寺やお坊さんにやって欲しい、という他人任せのようなアイデアよりも、これを地域でやりたい、という自発的なものの方が、私達審査員を含め、多くの人の心を動かすのだと思います。お寺は、地域内外の人が集まる空間として期待されている。お寺を舞台にしているからこそ地域が一層輝くアイデアが寄せられることを、次回に期待したいと思います。

 

中條暁仁 審査員

寺院は、旧来から地域社会において拠点的な役割を有し、人びとが気軽に集まり、そこで様々なコミュニケーションや交流が生まれる場所となってきました。いわば社会的結節点であり、社会関係資本(ソーシャルキャピタル)が生み出される源泉として機能してきました。さらに,現代日本では高齢化が急速に進んでおり、それに対応する地域社会の再構築が喫緊の課題となっています。いまこそ寺院の本来的な機能を見直し、活性化させなければならない時期に入っているといえます。

 その観点から,今回400通を超える応募作品を審査させていただきました。入賞作品は寺院あるいは住職(僧侶)を地域社会の中核に位置づけながら、その機能の再構築を目指そうという試みが多かったように思えます。寄せられた提案が各寺院の活性化にとどまることなく、日本の風土に根ざしたよりよいコミュニティの創造に寄与することを期待しています。

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