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日蓮宗メールマガジン1月号

【今月の法話】

『キンスカの木』

むかし、むかし、お釈迦さまが、インドのバラナシーという町にブラフマダッタ王として生まれ、国を治めていたときのお話です。王様には四人の王子がいました。

ある日、四人の王子たちが話をしていると、キンスカという木のことが話題になりました。しかし、王子たちは誰ひとり、キンスカの木を見た事がありませんでした。そこで、年老いた召使いを呼んで、「我々にキンスカの木を見せてくれ。」と頼みました。召使いは、「かしこまりました。でも、王子様方、この人力車には一人しか乗れません。私の都合がつく時に一人ずつお連れ致しましょう。」

こうして、しばらくたったある日、最初に長男の王子を車に乗せ、森に連れていき、キンスカを見せました。木はちょうど芽吹いている時でした。またしばらくして、次男の王子には若葉のまぶしい頃に、三男の王子には花の開いた頃に、末っ子の王子には実を結んだ頃に見せました。 後日、王子たちが集まった時、みんな得意気にキンスカについて話しました。長男の王子は「キンスカって、赤い芽がきれいだよな。」すると他の王子たちは、「いやいや、若葉がさわやかな木だった!」「ちがう!真っ赤な人の手みたいな形の花で、ちょっと恐かった。」「ちがうよ!見事な実を結んでた!例えるなら、マンゴーだよ。」と反論し、みんな互いにゆずらず、ケンカになってしまいました。

そこで、彼らは王様のところに誰が正しいのか聞きに行きました。王様は話を聞くと、王子たちをキンスカのもとに連れて行きました。そこには枯れたキンスカがありました。王子たちは口を揃えて言いました。「あれ?僕が見たのと違う!」すると王様は微笑みながら、「お前たちは確かにキンスカの木を見た。それぞれ正しい。けれど、目で見たものだけを信じて、どういう時期のキンスカかを召使いに聞かなかったから意見が食い違ってしまったのだ。我が息子たちよ。覚えておくが良い。同じものでも、時期や角度や人によって見え方や感じ方は違う。決して自分だけが正しい、他は間違っていると決めつけてはいけない。」と王子たちに教えました。

私たちは王子たちの様に自分の意見に固執してしまいがちです。この世界には、人と同じ数だけの意見があり、思想があります。柔和に人の意見を聞ける心を持つ事の大切さをキンスカの木のお話は教えてくれています。是非、柔和な心を持って今年をお過ごし下さい。

【お知らせ】

日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

8日  宗務院御用始め
13日  身延山御年頭会
28日 いのりの日