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ご挨拶

宗務総長ご挨拶 令和6年

「揺るがざる信仰」

令和6年の新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げ、本年が皆様にとって幸多き年でありますようお祈り申し上げます。

昨年を振り返りますと、5月に身延山久遠寺にて「日蓮聖人御入山750年宗門法要」が盛大に営まれました。全国遠近各地より多くの方々が一堂に会し、報恩感謝の誠を捧げ、祖山が大いに賑わいましたことは誠にご同慶の至りに存じます。今後とも、祖山登詣をひろくお願い申し上げる次第であります。

その一方、世界全体に目を向けますと、昨年は1年を通じて地球の平均気温が観測史上最高を記録し、7月には地球沸騰化と呼ばれるほどの異常気象や多くの自然災害に全世界が苦しみました。さらには、いまだ終わりの見えぬ戦禍により、今も多くの尊きいのちが失われていることは憂慮に堪えません。

現世はまさに混迷を極めており、これまで踏襲されてきた前例や価値観が必ずしも正しいものではなくなりました。マスクを外すことがかえって礼を欠くことや、自宅に居ながら働くことが当たり前になるなど、数年前に発生した未曾有の疫禍により、私たちの生活には目に見える以上の変化がもたらされました。裏を返せば、数年先の未来でさえも、誰も予測することができず、先行きの見えぬ暗闇は、私たちの心を蝕み、多くの不安や喪失を生みました。

このような未知の事態に遭遇したとき、私たちは自身で考え、表現し、そして解決していかなければなりませんが、そのためには、自らの内に揺れ動くことなき軸が求められることとなります。私たち法華経、お題目を拠り所とする者にとって、それはすなわち信仰にほかなりません。

日蓮聖人ご在世の頃と同じ、むしろそれ以上に末法濁世(まっぽうじょくせ)の様相を呈している今日であるからこそ、私たちは日々の信行を通じて、自身の中に確固たる軸を持ち続けなければなりません。

現在、日蓮宗では「いのちに合掌」を布教方針として、さまざまな活動を展開しています。常不軽菩薩(じょうふきょうぼさつ)の如く、但行礼拝(たんぎょうらいはい)の精神を携え、身の回りにあるすべてのいのちを敬い、感謝の気持ちを持つことは、私たちがこれからも生き生きと生きていくための最も大切な心がけであり、信行の基盤となるものであります。

私たちは、心ひとつに菩薩の道を歩み、人々に寄り添っていくことこそが、いずれこの現世が安穏(あんのん)なる仏国土となり、日蓮聖人が目指された立正安国へ近づいていくものと信じています。

聖人のご文章に、「新春の慶賀自他幸甚(こうじん)幸甚」とあります。新年の清々しい空気の中で、あらためて自身の軸となるものとは何か、内省を深めるとともに、遍くすべてのいのちに思いを馳せていただけたらと存じます。そして、小さな雨の雫がやがて大きな岩を穿つが如く、1人ひとりがお題目をお唱えし、世界の安寧を実現して参りましょう。

結びに、本年も皆さまが健やかに、そして心豊かに過ごされることを重ねてご祈念申し上げ、新春の挨拶といたします。

合掌
日蓮宗宗務総長 田中恵紳

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