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あんのん基金

平成24年12月10日

一人ひとりの子どもは社会の未来

一般社団法人福島県助産師会

団体名:一般社団法人福島県助産師会

事業名:助産所における産後母子入所ケア事業

支援金額:45万円(東日本大震災対応支援)

【団体紹介】:一般社団法人福島県助産師会

一般社団法人福島県助産師会は、日本助産師会福島県支部として1955年5月に設立されました。わたしたち福島県助産師会は、県内の助産師職能団体であり、3つの専門部会(助産所部会, 勤務助産師部会, 保健指導部会)と、7つの地区会(いわき会, 福島会, 郡山会, 白河会, 須賀川会, 会津会, 相馬会)によって成り立っています。 
設立以来、お母さんと子ども、またその家族の二一ズに応える助産の活動と、母子の保健に関わる活動を行い、健やかな暮らしをサポートしています。それとあわせて、優れた助産師を育成し、助産師自身が安心して働き続けられる環境づくりを行っています。
わたしたち助産師は、新たないのちの誕生に深く関わらせていただく専門職です。正常なお産については、わたしたち助産師が介助できます。妊娠中からお母さんの健康を高めて自然の力を最大に発揮し、安全で満足のいく出産や新たな人生のスタートとなるような支援を目指しています。そして、生まれた子どもが健やかに育つよう、親子や家族のきずなを育む育児を応援しています。
わたしたちは、妊娠・出産・授乳期の育児を中心に、思春期からご高齢の方まですべての女性の健康支援者として、頼りになる身近な存在でありたいと願っています。

【支援事業】:助産所における産後母子入所ケア事業

いま福島県では、出産直後のケアがとても大切な時期を、仮設住宅や借り上げ住宅など慣れない環境で過ごさざるをえず、産後のサポートがえられないお母さんと子どもたちがいます。
家族の中でも放射能に対する考え方が違い、そういった中で孤立し、心も体も疲れ果ててしまっているお母さんと子どもたちがいます。母乳で育てたいと思ってもお乳が出ない、また乳房のトラブルを繰り返すお母さんと子どもたちがいます。育児に対して強い不安を抱いているお母さんと子どもたちもいます。
「助産所における産後母子入所ケア事業」は、そういったお母さんと子どもたちに、安心できる助産所に宿泊していただき、24時間体制でわたしたち助産師がケアを行い、お母さんの心と身体の疲れを癒し、心の安定を促していく事業です。
それによって、お母さんたちがもともと持っている「母性」を取り戻していくこと、またその母性をもって子どもたちに接していけるようになること、それを通じて、子どもたちの健やかな成長・発達が促されるよう支援していきたいのです。

【事業内容と支援の使途】

病院・産科クリニック退院直後から出産後1年以内のお母さんと子どもを対象に、最大14日間のケアを行っています。母乳での子育ての支援や、赤ちゃんのお風呂の入れ方、赤ちゃんとの過ごし方などの子育ての指導、お母さんの心と身体の疲労回復のためのケアを行っています。
自己負担額は、1日3000円で入居施設は、「会津助産師の家おひさま」(会津若松市)、「こみゅーん助産院」(いわき市)、「中嶋助産院」(南会津郡田島町)の3つです。
今回の支援は「会津助産師の家おひさま」の運営費にあてさせていただきます。

【社会へ向けて】

東日本大震災が起こり、東京電力福島第一原子力発電所の事故発生のすぐ後から、福島県内で新たないのちを育み、子育てをしているお母さんと子どもたちの訪問支援を実施してきました。
その中で、出産後のお母さんと子どもが少しでも安心して休める場を提供したいと、産後ケア施設「会津助産師の家おひさま」を開設しました。
現在、会津助産師の家おひさまと県内の助産所3カ所において、産後のお母さんと子ども入所ケアを実施しています。

避難の有無に関わらず、放射能環境下で、新たないのちを育み、子育てをしていくことはとても大変なことです。
通常の出産後の不安やストレスに加え、慣れない土地での避難生活や放射能による未知の不安、赤ちゃんを抱えるお母さんたちの心身の疲労にははかりしれないものがあります。母乳で子どもを育てたいと望んでも、母乳が充分に出ないなど、乳房のトラブルを繰り返すお母さんも多くいます。
福島県助産師会では、電話での相談支援やご家庭への訪問も行っています。またお母さんたちがわたしたちの子育てサロンに来ていただくこともできます。
けれども、これらの支援で一時の心の安らぎはえられたとしても、24時間続く育児による疲労はなかなか軽減できるものではありません。

【福島県での子育て】

お母さんの疲れは子どもの「泣き」として現れます。
ある朝早く「子どもの口をふさぎたい」と疲れ切った表情で来られたご家族がいました。
お母さんはわたしたちに子どもを預け、まず一時をぐっすり眠ったことで、少し安心しました。わたしたちの支援の中で、お母さんの表情が少しずつやわらいでいき、それにともなって子どもの「泣き」も少なくなっていきました。そして徐々に子どもとの接し方にも変化が見られ、「会津助産師の家おひさま」を退所する頃には母親としての自信を取り戻して帰って行かれました。

この母子を通し、健やかに子どもを育てるためには、まず母親への十分なケアが必要であることを実感しました。

【事業の状況】

事業を開始した2011年7月から2012年10月までの利用者は52組の母子、延べ593日間(平均11.4日間)です。決して利用者が多い訳ではありません。
福島県助産師会は、現在、福島県の委託事業により母子の電話相談や、母乳の放射性物質濃度測定検査の受け入れ窓口、妊婦及び母子の訪問支援、助産所に来ていただいての母乳育児支援、また県内各地での子育てサロンを実施しています。
しかし、各方面に支援をお願いしているものの、この「助産所における産後母子入所ケア事業」に関する支援は得られていません。「少ない対象者に多額の費用を支援することは出来ない」「後の継続性が見えない」というご意見があることも確かです。

【いまやめるわけにはいかない】

しかし、この放射能環境下でも、この福間県にて、新たないのちを育み、子育てをしようというお母さんやご家族がいらっしゃる限り、いまこの事業をやめるわけにはいかないのです。
出産するお母さんやご家族の皆さまが少しでも安心できるよう、育児に疲れ切った時、困った時の緊急避難所として、とても大切な事業であると思っています。
また、現在、低出生体重児の割合が増加し、乳幼児虐待も多くなっているという社会状況もあります。わたしたち福島県助産師会としては、この事業は、被災の有無に関わらず、母子支援の一つの方法として存続させるべきものと考えています。

一人ひとりの子どもは社会の未来です。一人のお母さん、一組のご家族が少しでも安心して子育てできるように支援したいと思っています。
そして、その子どもの健やかな成長が、家族や家族を取り巻くたくさんの人々の幸福に結びつくと信じています。

 

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