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あんのん基金

平成26年10月24日

市民科学者国際会議による情報・知見・取り組みの共有

市民科学者国際会議 (CSRP)

団体名:市民科学者国際会議 (CSRP)

事業名:市民科学者国際会議による情報・知見・取り組みの共有

支援金額:30万円(平成26年10月)

【団体紹介】

市民科学者国際会議は、あらゆる政治、経済、イデオロギー、宗教から独立した自由な市民として、東京電力福島第一原発事故による放射線の健康および環境への被害を最小化するための活動に取り組んできました。現在行われている放射線防護対策は、国際放射線防護委員会(ICRP)や原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の勧告・報告にもとづいて行われています。住民の放射線防護には、何よりもまず放射線の健康影響の科学的究明が不可欠ですが、近年、その根拠とされてきたこれらの団体の影響評価が過小評価であることを示唆する科学的知見がいくつも発表されています。市民科学者国際会議の目的は、放射線の健康影響に関する世界の最新の科学的知見を集め、そをらを市民と共有するとともに、こうした新たな知見を具体的な放射線防護対策なかで最善の形で生かしていけるよう、国際的なネットワークを維持発展させていくことにあります。そのための活動の中心として毎年開催している「市民科学者国際会議」は、放射線関連の専門家と、東京電力福島原発事故への放射能対処において様々な取り組みをしている市民・団体が一同に会して、情報の共有・フィードバック・意見交換の場であり、その成果はwebサイト(http://csrp.jp)やインターネットビデオ、各種出版物の形で広く内外に発信されます。

【活動内容】

1. 年に一度の国際会議の開催

2.勉強会、ワークショップの開催、講師派遣

3.重要な知見、論文などの翻訳、および出版のコーディネイト

国内外の市民、科学者、医師とのネットワーク構築

【支援事業について】

 

東京電力原発事故が発生した平成23年から、市民と国内外の科学者による放射能から防護を考える会議を開催し、「低線量被曝は安全である」とする国際専門家会議への問題提起と、健康への影響の最小化に関するあらゆる現状と知見と認知を共有し、今後取り組むべき課題を話し合っています。今年度(第4回)の会議は11月22日〜24日に開催を予定しています。

【社会へ向けて】

東京電力福島第一原子力発電所事故は、福島県とその周辺地域を中心に、東日本やその海域、さらには北半球全体を放射能で汚染し、現在もなお放出が続いています。汚染地域の人々(子ども、市民、事故処理作業員)の不安は、放射線被ばく、とくに低線量被ばくの健康被害がまだよく分かっていないこと、そして何よりも政府の情報と放射線防護、放射能対策が信用できないことでいっそう助長増長されています。いま求められているのは、経済的コストではなく住民の健康被害を極小化するための、予防原則に立脚した前向きの放射線防護、放射能対策です。

私たちは3.11以後、毎年、政府や産業界、そしてその影響を受けた学会の主流から独立した立場を貫いてきた専門家(市民科学者)を集めた国際会議を開催して、放射線の健康被害に関する最新の科学的知見を学び、よりよい放射線防護、放射能対策の在り方を検討してきました。

過去3回の会議から、主として次のような点が浮き彫りになりました:

1.  現在の放射線防護の根拠とされている国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告が放射線の健康被害の過小評価に基づいている疑いがあること。

2. 事故直後の放射能プルームによる被ばくの実態はほとんど分かっておらず、健康被害を明らかにするためにはその再構築現構築が不可欠であること。

3.  放射線の健康被害はがんに限定されるものではなく、がん以外のさまざまな疾患をもたらし得ること。

4. チェルノブイリ原発事故後観察されてきた動物の異変の一部がすでに福島県内でも観察されていること。

5. 現在、日本で年間被ばく線量20 mSv(あるいは100 mSv)があたかも健康被害の閾値であるかのような言説が公式に行われていること。

これらの成果は、国内の有力科学誌に発表するとともに、私どものwebサイト(csrp.jp)を通して内外に公表してきました。

2014年11月の第4回「市民科学者国際会議」では、これまでの成果を踏まえて、放射線による健康影響とその対策についてさらに議論を深めるとともに、とくに放射線のリスクコミュニケーションの現状とそのあるべき形にも焦点を当て、国際的なネットワークを広げることをめざします。

第4回 市民科学者国際会議の焦点

昨年の10月に行った第3回市民科学者国際会議の前日に、日本政府は「原発事故 子ども・被災者支援法」の基本方針を閣議決定しました。その内容は、多くの被災者、支援者、法律家、立法に携わった国会議員、そして支援対象地域の指定を要請してきた東北および関東の諸自治体の期待を裏切るものでした。年間の追加被ばく線量1mSv以上の場所を対象地域に指定することが国会で議論されていたにもかかわらず、実際の対象地域とされたのは福島県内の33市町村のみでした。また、避難者・移住者・居住者・帰還者に対する平等な権利と補償が法に明記されているにもかかわらず、法の実際の運用は、不平等であり、人口流出を防ぐ方針に拍車がかけられています。

放射線防護の観点から特に懸念されるのは、この基本方針が、よりリスクコミュニケーションに重点を置いたものになっていることにあります。言い換えれば、「問題は原発事故による放射能汚染とその影響ではなく、不安に感じる心にあるのだ」として、恐怖や不安を感じる自由を抑圧し、管理する政策がさらに強化されているのです。これは、放射能汚染の問題を心の問題にすり替えることで、加害者にではなく被害者に罪を着せる方法でこの問題に対処しようとするものと言え、チェルノブイリ原発事故の被災地で行われた政策を彷彿させます。

特に、政府やその意向を汲む専門家集団による健康リスクの過小評価においては、「間違い」とは言えないまでも、明らかに誤解を誘導するコミュニケーションの手法がとられてきました。「100mSv(20mSv)以下での健康影響の証拠は見つかっていない/発生は考えにくい/他の要因に隠れる/有意ではない」といった政府や「専門家」の表現は、マスメディアによって「健康影響なし」という見出しに置き替えられて報道されています。しかし、こうした表現がこれまで環境省や「専門家」によって訂正されてきたことはかつて一度もありません。このため、大多数の市民の意識には「健康影響はない」という言葉だけが刷り込まれ、危機感が希薄化されているのが現状です。

2013年10月、第3回市民科学者国際会議の円卓会議の冒頭で、共同議長のセバスチャン・プフルークバイル博士は、「私たちはどこまで許容するのか?」と放射線防護の意義を問いました。これまでの科学的な知見から得ることのできる被害予測はなされぬまま、許容限度量がごく一部の専門家によって引き上げられています。東京電力福島第一原子力発電所の現状に触れて、博士は最後にこう述べています:

「私が聞いている範囲だけでも、状況は極めて危険であると思う。IAEAの旗を振っていてもいいから、“鉛の鎧をつけた騎士”が立ち上がり、残っている核燃料を取り出すのを助けてほしい。そして、子どもたちに私たちがこの会議で話している内容を伝えてほしい。」

この危険がどれほどのものなのか、私たちにはまだ十分な認識がありません。もしも国際原子力機関(IAEA)が正しく認識しているのなら、教えてほしいものです。燃料を取り出したとしてもそれをどこへ持って行くというのでしょう? 取り出すのではなくそのまま封印するとしても、将来にわたって漏れないように封じ込めることは可能なのでしょうか? 作業中の不慮の事態、さらなる地震・津波等の自然災害、何らかの巨大な破壊力に襲われない保証はありません。しかも驚くべきことに、事故後の被災地では、今後起きるかも知れないそうした緊急時への具体的な対応策が示されたことが、一度もないのです。幸運に恵まれてそうした過酷な状況を迎えなかったとしても、事故収束作業に取り組む作業員の被ばくとそれに伴う被害は、最終的にどれほどのものとなるのでしょうか? そしてすでに被ばくしてしまった住民、そして今後も放射能汚染の影響下にある地域の住民の被害を、この社会はどこまで許容するのでしょうか?

現在のきわめて困難な深い闇の中から、新たな光を見出すために、ここに第4回市民科学者国際会議を開催します。みなさまのご参加とご協力をお願いいたします。

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