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あんのん基金

令和4年1月

外国籍住民への乳がん啓発パンフレット作成事業

特定非営利活動法人 外国人医療センター

団体名:特定非営利活動法人 外国人医療センター

事業名:外国籍住民への乳がん啓発パンフレット作成事業

実施期間:2021年12月~2022年3月

支援金額:22万円

 

【団体紹介】
1990年、出入国管理および難民認定法の改正により、労働目的の外国人が増加。労働災害等も多発し、厳しい労働条件の中で働くうちに体調を崩すなど、健康面での問題を抱える外国人が増加しました。当時、外国人への医療支援を行う団体は愛知県にはなかったため、外国人支援者や医療関係者が中心となり、1998年外国人医療センター(通称MICA)が設立されました。設立から23年経過した現在も給料未払いや労災隠しなど、外国人の厳しい状況は変わらず、生活が困難な外国人に対し相談できる場所を提供しています。必要に応じて医療機関を紹介するのみでなく、外国人や労働者支援団体等と協力しながら外国人が安心して生活できるよう医療面から支援を行っています。

 

【活動内容】
外国人医療センターは、愛知県で暮らす外国人を対象に、誰もが安心して保健医療サービスを受けられるような公正な社会づくりに貢献するため活動しています。主な事業は、外国人無料健康相談会、電話・Eメールによる医療情報の提供、政策提言活動などです。主要事業である外国人無料健康相談会は、設立後、通算259回実施し、延べ4,860名の相談者に対応してきました。2016年からは、名古屋市から外国籍住民への結核検診事業の委託を受け、年1回、名古屋国際センターで実施しています。

 

【支援事業について】
当センターが実施している外国人無料健康相談会では、女性相談者の乳がんに関する相談が微量ながら増加傾向にあります。当センターの相談者はベトナム、ブラジル、フィリピンが多く、それらの国は欧米に比べると乳がん患者は少ないものの、患者数は増加傾向にあります。外国人無料健康相談会でも「乳がんが心配」という声がしばしばあり、市町村のがん検診を勧めています。しかし、日本語が読めないため検診の広報が来ても破棄してしまい、検診の機会を逃している現状があります。乳がんの早期発見治療につなげるためにも、乳がんセルフチェック方法や異変に気付いた時の対応についてなどを多言語で作成し、活用してもらうことが大切だと考え、この事業を計画しました。
事業実施に当たり、がん患者のサポートをしている当センターの理事を通じて愛知県江南市にある江南厚生病院を拠点として活動している乳がん患者会Mamm’s Dining(マミーズダイニング) 代表 加藤美津子氏に相談、助言を得て作成した。外国人向けということで、イラストを多くし、文字を少なくすることで見てわかるよう、工夫した。
また、乳がんのセルフチェックについては、加藤氏と相談を重ね、親しみやすいイラストが良い、ということで当センター理事を通して尾島五時氏にイラスト作成の協力を得ることができた。
外国籍住民向けの乳がん啓発パンフレットを英語、ポルトガル語で作成。理事 傳田氏より紹介を受けたMamm’s Dining(マミーズダイニング) 代表 加藤美津子氏より専門的な助言を、尾島五時氏にイラスト作成の協力を得た。今後、外国人無料健康相談会などで配布予定である。

 

【社会へ向けて】
日本では、乳がん検診の受診率が30%程度で、先進国の中でも低く、発見が遅れ、死亡率が増加傾向にあるそうです(女性の健康推進室 ヘルスラボより)。e-Statによれば、2020年12月現在、日本には2,887,116名の在留外国人が生活しており、外国人技能実習生は373,200名、留学生は280,901名です。そして、女性は1,457,645名で、日本に住む外国籍者全体の50.49%を占めています。日本語が読める人はともかく、技能実習生は、仕事で忙しく、医療機関に行く時間も与えられない人が多くいます。留学生も、本来の学業ではなく、雇用する目的で受け入れている学校も少なくありません。乳がんは、40代から増加する病気です。まだまだ子育ての途中であったり、重要な仕事を任される年代だったりするなど、人生でまだまだ活躍できるときに襲ってくる病気です。早期に発見できれば、生命予後も良好で、欧米では乳がん発見率が高くても死亡率は低下傾向にあります(女性の健康推進室 ヘルスラボより)。外国籍住民は、日本語の理解が十分でなかったりするなど、情報を得にくい環境にあり、住民であれば受けられる検診も受ける機会を逃してしまいます。少しでも検診の機会を確実に確保し、乳がんの早期発見につなぐためにも、多言語パンフレットを作成し、啓発することが大切だと考えました。作成したパンフレットは、当センターの外国人無料健康相談会や関係団体に配布し、活用してもらいたいと思います。
女性タレントが乳がんになり、SNSで自分の乳がんについて情報発信をするなど、乳がんに関する情報が増えています。女性は、家族を支えたり、子育てをしたり、仕事でも重要なポジションを占める位置にいる人もいます。
少子高齢化が進む日本では、外国人技能実習生の協力がなければ人手不足となってしまいます。期限があるとはいえ、彼らは日本に住み、日本の企業で働き、所得税、住民税、消費税などの税金を日本に納め、日本社会に貢献している住民です。しかし、最近では新型コロナウイルス流行により解雇され、生活や健康上の不安を抱え、相談できる場所もありません。給付金申請書類の記載方法等、健康等に関する相談ができる場所を提供することで、少しでも安心して生活できる場の確保につながります。状況が改善すれば日本社会に再び貢献してくれる存在になってくれます。外国人が単なる労働者ではなく、国籍を問わず住民の一人として生活できる地域になることが豊かな社会につながると考えます。

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