じつは身近な仏教用語

引導

【いんどう】

【s: parikarṣaṇa】

相手に引退を促す、一線を退くきっかけを与える慣用句に「引導を渡す」という言葉があります。
古くは漢の王充(おうじゅう)の『論衡(ろんこう)』に「薬を服して引導す」とあり、大気を導いて体内に引き入れる道教の養生術。また『南史(なんし)』王僧弁(おうそうべん)伝に「群魚有りて水に躍り空に飛びて引導す」のように、手引きする、案内の意味にも用いられていましたが、仏教では法華経(ほけきょう)方便品「無数の方便を以て衆生を引導す」のように、人びとを導いて仏道に入らせるという意味に用いられます。
現在では、葬儀の際に導師から、亡くなった方に対して、この迷いの世界から浄土へ導く儀式作法を行います。この作法の事を〈引導を渡す〉と表現します。
これが転じて、冒頭に用いられるような慣用句になったと言われます。

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