お題目に生きる
公開日時:2021/03/20
人や動物に尽くす3世代
手先の器用さに合わせ供養の心も
埼玉県さいたま市G寺世話人のS・Kさんは、航空会社の全日空を定年まで勤め、飛行機の整備に従事してきた。航空会社勤務というと、パイロットやキャビンアテンダントを連想する人も多いが、利用者の安心・安全を陰で支えているのが、整備士たちだ。現在はG寺の世話人の1人として寺の諸行事や役員会などに積極的に活動しているが、陰日向なく誰かのために一生懸命な姿は在職時と変わらない。
Sさんが世話人になる前には、母親のFさんがお寺で毎月1回行われている信行会に参加して、お経の練習に励んでいた。Fさんは手先がとても器用で、信行会後のお茶会に自分が折紙で作った毬やくす玉などを持参してきた。何枚もの折紙を組み合わせて立体の物を組み上げたくす玉は見事なできばえで、Fさんの器用さはお茶会にいた人たちを驚かせた。作り方を教わろうとした人も多かった。Sさんが整備士の道に進んだのは、Fさんの手先の器用さを受け継いだからだろうか。
Sさんの息子のAさんは、令和元年に地元さいたま市にペットクリニックを開院し、院長として犬猫を専門に診療を続けている。これもまた手先が器用でなくては勤まらない仕事だ。昨年10月末にSさんとAさんからお寺へ相談を持ちかけた。「クリニックが開院して1年になる節目に、院内で治療の甲斐もなく亡くなったペットの供養をお願いしたい」ということだった。
2人は動物の供養祭や慰霊祭などについて調べたのだが、寺院や斎場でペット供養をしているところはあっても、Aさんが考えている動物病院内で祭壇を作り供養するような例は少なかった。Aさんは、大学卒業後に沖縄や東京などの動物病院で治療をするなかで、「自分が動物病院を開業する時には院内で慰霊祭をしたい」と考えるようになったという。「ペットが亡くなった時に、飼い主が手厚く供養されていると思いますが、亡くなったのは処置をしていた治療室。自分の思いとしては亡くなった場所のクリニック内で供養・慰霊をしたいと考えた」と話す。昨年11月末にはG寺副住職が導師を務め、治療室の中央に祭壇を設えて慰霊祭を営んだ。「コロナウイルスが収束すれば希望者を集めて慰霊祭をしたい。いずれはクリニックの敷地内に慰霊塔を造り、飼い主の人にペットとの思い出を偲んでもらう場になれば」と話す。
K家3世代は手先の器用さを活かした仕事を通じて、世の中の人に尽くし、菩提寺とのご縁を深めている。