法華経と共に生きる人々

お題目に生きる

公開日時:2021/12/20

合掌の心で思いやり介護

入居者の考えや習慣生かしその人らしさの支え

K市J寺檀信徒のJ・Nさんは現在、A県A市「Aガーデン」を運営するD株式会社の代表取締役社長を務めている。平成26年に開設されたAガーデンは、地域に根ざした介護事業を目指し、サービス付きの高齢者住宅、リハビリ特化のデイサービス、訪問看護、訪問介護など、業務は多岐に渡る。

Aガーデンでは、室内に仏壇を置くことができるので、多くの入居者が仏壇を置き、毎朝手を合わせている。仏壇には施設内に咲いている花や、甘味や果物が供えられ、同ガーデンの介護と仏教との関わり合いは深い。代表のJ子さんの思いが反映されているといってもいいだろう。

J子さんにとって終末期である看取りは特別なことではないが、徐々に体力が衰え、死を迎える人を支えるという仕事は精神的な負担が大きい。この仕事を通じ他人事のように捉えていた死を身近に感じるようになり、今では死を扱う責任ある仕事であるという認識で、日々真正面から向き合う。

入居者の中には、「早くお迎えに来てほしい」と口にする人がいる一方で、身近な入居者の死を経験することで、自分自身が生かされていることに気づき、感謝の心で手を合わせる人や、信仰を心の拠り所にする人もいる。「日蓮宗の教えの中に、苦しみ悲しみを知っている人が悟りを開くとありますが、人それぞれ苦しみや悲しみがあり、高齢者の皆さんは、それを乗り越えて年を重ねているように、独自の死生観を持っています」と語る。介護をする側として、入居者の考えや生活習慣を生かし、その人らしさを支えるために、話を傾聴することも重要なケアの一部だと考えているそうだ。

J子さん自身も亡くなった両親の教えのもと、毎朝仏壇にお水、炊きたてのご飯、お茶を供える。そして1日を気持ちよく始められるよう、家族の健康、安全を祈る。また帰宅後、仏壇に手を合わせ、1日のことを反省したり報告したりすることが習慣になっている。ご先祖さまがあり、現在の自分がいる。お守りいただいていることへの感謝を毎日伝え、それを大切なことであると子どもたちにも受け継がせている。

母親が急逝した時には、自分の発した言葉や態度への後悔の念で涙が止まらず、喪失感や悲しみを通り越して苦しみになった。やがて桜の時期には母と見に行った場所に出向き、秋には紅葉の京都に行くなど、母との思い出を大切にするようにした。すると死別の苦しみは時間の経過とともにその後の人生に生かされていることに気づいた。自分は亡き母に守られているという認識に変わり、お経の意味を深く考えるようになった。これが悟りを開くというお釈迦さまの教えなのかと感じるようになったという。

仏教と介護に密接に触れ、亡くなった人を大事にし、合掌の心を忘れないJ子さんだからこそ提供できる思いやりのある介護。それがAガーデンを支えている。

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