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すべての人に寄り添うお寺であるために 〜LGBTQを知る〜

LGBTQや性的マイノリティという言葉をよく見聞きするようになりました。「同性を好きになる、生まれ持ったからだの性とは違う性別を認識する」ことなどに対して、偏見や差別により苦しんでいる人がいます。私たちの何気ない一言や先入観で無意識の差別をしてしまう場合もあります。

日蓮宗は“いのちに合掌”を掲げ、すべてのいのちが等しく尊重される安穏な社会にむけて様々な差別の問題に取り組んできました。

性の多様性についても理解を深め、寄り添うことが大切です。

性的マイノリティ(LGBTQ)

レズビアン:L(女性の同性愛者)、ゲイ:G(男性の同性愛者)、バイセクシュアル:B(両性愛者)、トランスジェンダー:T(心の性別と体の性別が違う人)、Qは、あえて決めない、決まっていない、よくわからない方々であるクエスチョニング、または性的マイノリティ全体の総称であるクィアを指し、LGBTQはその頭文字をとった略語です。

性の多様性を知ろう

性のあり方は、一人ひとり異なります。おもに次のような要素の組み合わせによって作られますが、枠にとらわれない理解が必要です。

からだの性別

生まれた時の体の特徴によって割り当てられた戸籍上の性
※法律上・戸籍上の性別を出生時のものから変更する人もいます

性自認

自分の性別をどう認識するか。
男性/女性だけでなく中間、どちらでもないなど、多様にある

性的指向

どういった対象を好きになるか、ならないか 異性愛、同性愛、両性愛など様々な形がある

性表現

服装や髪型、言葉遣いなど自分の性の表現方法

性的マイノリティにおける表現の一部です。本掲載以外にも多様で変化する場合もあり、知識の更新が大切です。

仏事において困ったこと、
悩んでいること

亡くなったら私のお葬式はどうなるの?

遺族、本人、パートナーの望みが異なる場合があり、丁寧な寄り添いが必要です。体の性と心の性、どちらの法号(戒名)で供養するかなど、亡くなった本人、遺族、パートナーなどそれぞれの立場や考えがあります。供養をするうえで、お互いの理解はとても大切です。一面的な見方ではなく、多様な心情に耳を傾けましょう。

パートナーと一緒にお墓に入れる?

墓地規約に「血縁者のみ」としている場合があります。積極的な受け入れをしている墓苑も少ないようです。

法事や葬儀に参列しづらい

パートナーの家族から葬儀への参列を拒否される事例もあるようです。大切な人を失った喪失感と拒絶は大きな悲嘆に陥ります。

同性愛は病気。祈願すれば治ると言われた。

病気や障がいではありません。前世の報いや因縁などと差別してはいけません。

思春期の子どもが抱える悩み

男らしくしなさい、女の子なんだから...。昔は当然だった言葉も注意が必要です。学校生活(プール授業、トイレ、恋愛など)での悩み、家族の理解が得られないなど、からだとこころが成長するなかで生きづらさを感じる子どもがいます。いじめの対象になる場合もあるようです。家庭・学校ではない第3の居場所に寺院がなることで、だれにも相談できず悩んでいる子どもに寄り添うことができます。

LGBTQの子ども・若者調査2022:10代LGBTQは、この1年で、48.1%が自殺念慮、14.0%が自殺未遂、38.1%が自傷行為を経験

なぜLGBTQへの取り組みを
進めるのか

性的マイノリティは10人に1人

相談したくてもできない方が身近にいらっしゃいます。

※電通ダイバーシティラボ「LGBTQ+2023調査」...9.7%統計データはいくつかありますが調査方法や定義により差異があります。数字の多少もありますが、確実に私たちの身近に性的少数者の方がいることを感覚としてお持ちください。

社会的責任

行政や企業、学校などでも理解を深める取組が進められている社会的背景があります。
知らなかった、わからなかったでは、時代に即していません。

いのちに合掌。すべての人々が生きやすい社会づくり

人間だけでなく、すべての存在(生物や植物、物質など)に敬いと寄り添いの気持ちを表す言葉。日蓮宗は布教方針「いのちに合掌」の精神をもって、すべての生物・自然環境の「いのち」を互いに尊重する社会を築いていきたいと考えています。

できることから、はじめる

基礎を知る

性の多様性に関する研修会の開催。書籍、WEBなどから学ぶ。

適切な言葉を使う

男(女)なんだから・結婚して一人前・オネエ系・そっち系・ホモなど不快にさせる言葉があります。また恋愛対象は異性だけとは限りません。彼女(彼氏)ではなく「恋人・パートナー」など、性別に中立的な言葉を使用する。

プライバシーを守る。秘匿の重要性

LGBTQの人自身が自分の意志で他者へ当事者であることを伝えるのがカミングアウトです。いつ、だれに、どう伝えるかは本人が決めることで、お寺に相談に訪れた方のプライバシーは必ず守りましょう。本人の同意なく第三者に暴露することをアウティングと言い、時には命の危険につながります。

寄り添う。ALLY(アライ)の1人として

レインボーステッカー(虹は性の多様性を表す象徴)の掲示。地域での交流会やプライドマーチ(自分らしく生きることを目的とした集会)に参加して自分で感じ、実態を知る。ALLY(アライ)とは、LGBTQの人たちに寄り添いたいと考え、支援する人のことで「仲間」や「味方」などを意味する英単語「ally」に由来しています。

法華経に説かれる多様性

私たち日蓮宗が信仰する経典、つまり日蓮聖人が依拠された『法華経』は、「すべての存在は、成仏にいたる尊い存在である」と示すために作られました。したがって『法華経』には、お釈迦さまの「衆生、悉是吾子(すべての生きとしいける者は、ことごとく我が子である)」(譬喩品第三)、「亦不分別、是男是女(これが男だ、これが女だとして差別を設けてはいけない)」(安楽行品第十四)といった、平等を尊ぶ言葉がおさめられています。とくに、この安楽行品の言葉は、男女差別をいましめるだけでなく、ジェンダーを男女の二分に限定する固定概念すら打ち破っています。ステレオタイプな男女二分法におさまらない存在、すなわち性的マイノリティを肯定する思想といえましょう。

さらに日蓮聖人は、「性的マイノリティの人々を排除しない」という原則が、大乗仏教の大前提としてある、とも述べておられます(「黄門・二形......不嫌、但一種菩薩戒授」)。そしてこの平等主義を徹底させるべく歩みを進め、すべての衆生のために説かれた『法華経』に入りなさいと、先ほど挙げた「衆生、悉是吾子」の文を引いて仰っています(「一切衆生開会之文......衆生悉是吾子」)。このことを日蓮聖人は、布教活動の開始当初に書かれた『一代聖教大意』の中で述べておられます。つまり聖人の原点は、性差などに囚われず一切を尊ぶ姿勢であったともいえましょう。

しかし、すべての人の平等を訴えることは、時に世間からの反発を招きます。差別や偏見に囚われている人も多いからです。そこで私たちはどうすべきか。『法華経』常不軽菩薩品第二十に登場する常不軽菩薩が、よいお手本になりましょう。

この常不軽菩薩は道ゆく人を誰であろうと礼拝し、すべての人を分け隔てなく敬った菩薩です。その行動が不審がられ、傲慢な人々から石を投げつけられるなどの迫害を受けました。しかし常不軽菩薩はめげずに、ひょうひょうと礼拝を続けたといいます。そして常不軽菩薩は、その功徳で悟りを開き、彼を迫害していた人たちも後に改心し、彼の弟子となった......といわれています。

「すべての人を敬おう」という思いを曲げなかった常不軽菩薩。彼のように差別・偏見を認めず、たとえ小さくてもいいから持てる力で信念をつらぬき、ついには平等の理想を人々に浸透させ、実現させる。それが『法華経』を行ずる指針だといえましょう。

文/岡田文弘...岡山県妙興寺修徒。博士(文学・東京大学)。身延山大学特任講師。

あなたらしく生きることを応援:LGBTQへの差別や偏見だけではなく、私たち日蓮宗僧侶は今を生きるすべての人々に寄り添えるよう、学び、共に祈り続けてきました。誰にも相談出来ず、人知れず不安や悩みを抱えている人がいます。安心を得られる場所のひとつに「お寺」が選ばれ、法華経を依拠として「いのち」を尊重し、社会全体の幸福を求め、立正安国の成就を願います。