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日蓮宗メールマガジン6月号

『うさぎとかめ』

「♪もしもしかめよ かめさんよ 世界のうちでお前ほど 歩みののろいものはない どうしてそんなにのろいのか」
これは有名なイソップ童話の「うさぎとかめ」という物語をモチーフにした歌です。
皆さんご存知の通り、この後うさぎとかめは山の頂上を目指してかけっこの競争をし、ゴール目前で勝ちを確信して油断をしたうさぎは、居眠りをしている間にかめに追い越され、結局負けてしまうというお話です。

この童話からは二つの教訓を学ぶことができます。
一つは、能力が劣っている者でも、脇道にそれず、着実に真っ直ぐ進むことで、最終的に大きな成果を得ることができるということ。
そしてもう一つは、過信して思い上がり油断をすると物事を逃してしまうということ。

勝ち戦を挑んだうさぎからしてみれば「まさか自分が負けるなんて」と、さぞ悔しかったことでしょう。
うさぎが負けた原因は、何と言ってもやはり「足の速い自分が、のろまなかめに負けるはずがない」と慢心を起こしてしまったこと。慢心とは、自分が他人より優れていると思い込むことであり、自分を不幸に追い落とす煩悩です。

お釈迦様は、「悟りを目指して仏道修行をする者にとって、慢心は大きな敵となる」と仰られました。そして『法華経』の中で、「末法の世には、慢心を持った者が多く充満する」と予言されたのです。
そのお言葉の通り、現代の世の中は、周りを見渡しては自分のものさしで他者を順位付けし、自分より劣っている者を見下しては幸福感や充足感を得る、そんな時代になっていると思います。

日蓮聖人は、『法華初心成仏抄』というお手紙の中で、
「仏になる道には、我慢偏執の心なく南無妙法蓮華経と唱へ奉るべき者也。」
つまり、私たちが仏となる為には、うぬぼれの心を持たず、南無妙法蓮華経とお唱えすることが大切である、仰っておられます。

お釈迦様のお弟子さんの中にも、才能には恵まれていたものの慢心が原因でいつまで経っても悟りを得られなかった者もいれば、鈍根第一といわれても地道に修行を続け、最終的に悟りを得られた方もいます。
「うさぎとかめ」の物語の冒頭で、『のろまで可哀想な生き物だ』とけしかけてきたうさぎに対し、かめは『いやいや、ゆっくり生きるのも悪くないですよ。』と答えたといいます。
私達もこのような時代だからこそ、日頃からお題目をお唱えして、慢心を捨て謙虚な心を持ち、他者を蹴落とすのではなく互いの良さを認め合う、そんな心温かな世の中を生きたいものです。

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

7日 月例金曜講話
15日 開闢会(15〜17日、於・身延山)
25日 日朝上人会
28日 いのりの日