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日蓮宗メールマガジン10月号

『菊慈童』

先日、あるテレビ番組で「菊慈童」という愛らしい童のブロンズ像が紹介されていた。菊慈童は能楽の演目や画題、ある地域では笠鉾にもなっている。

菊慈童の説話のあらすじは

『慈童は周王朝第五代穆王(ぼくおう)の御寵愛を受けていた美少年。ある日慈童は、誤って穆王の枕を跨いでしまった。(枕は、使用している人の魂が宿るといわれており、古くから跨いだり、投げたりしてはいけないといわれている)その罪で、慈童は生きては帰ってこれないといわれる“れき県山”に流されてしまう。慈童を哀れに思った穆王は、お釈迦様より直接賜り、あまりにも尊いために誰にも伝えることのなかった「四海領掌の偈」という八偈の内の二偈を慈童に授け「毎朝十方を一礼し、この経文を唱えなさい」と伝えた。慈童は忘れないように、菊の葉にその二偈を書きしるし、穆王に言われたように経文を唱えた。すると、その菊の葉から滴る朝露が甘露となり川に流れ、川の水が不老不死の薬となった。この水を飲み続けた慈童は700年以上たっても、幼い美少年のままであった。』

実際に菊には若返りのビタミンが含まれ、強い抗酸化作用や解毒作用、目の健康維持など多くの薬効がある。中国の薬草書「神農本草経」には長い間菊花を服用しているといつまでも若さを保てるという内容が記されている。

菊慈童の説話は私たちが拠り所としている妙法蓮華経(法華経)にも関わりがある。この中に出てくる『四海領掌の偈』は法華経である。

四海領掌とは、法華経を信じ続け、褒めたたえ、供養する功徳によって世界を治めるという意味がある。

その『四海領掌の偈』とは

『十方仏土中 唯有一乗法(方便品)』

あらゆる世界におられる仏様が説く教えは、生きとし生けるもの皆が仏に成るという教えのみ。

『観一切法空 如実相(安楽行品)』

世の中の変化するすべての事柄の中に永遠に変わらない真実の姿を観る

『仏語実不虚 如医善方便(寿量品)』

仏様の言葉は真実であり、まるで勝れた知恵を持っている医師が苦しんでいる自分の子どもを救うように様々な方便をもって生きとし生けるものを救ってくださる。

『慈眼視衆生 福聚海無量(観世音菩薩普門品)』

観世音菩薩は、慈悲の目で普く人々の悩みや苦しみを観察し、仏様のようにしてあげたいとそれぞれに応じて教えを与え、救済の道を開いてくださる。観音様の御心をもって菩薩の修行を行っていけば、海に一切の水が集まるように仏様のような心の徳が無量に具わる。

という意味が込められている。

穆王が慈童に授けた二偈は観世音菩薩普門品の二偈であった。

日蓮大聖人は母方の従兄弟、法蓮入道に与えられたお手紙「法蓮抄」において

「法華経の文字は、みな生身の佛なり。我等は肉眼なれば文字と見るなり。」とおっしゃられている。

菊慈童が菊の葉に記した法華経の一文字一文字は生きておられる仏様のお姿、御心である。

仏様の大慈悲や功徳は露を甘露にするほどであり、この説話は法華経が御仏の真の教えであり、勝れていることを表している。そして、露を甘露の薬に変化させたのは、何よりも菊慈童が法華経を心に持(たも)ち続け、信じ続けたからである。

合 掌

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

10日 佐渡法難
13日 宗祖御会式
28日 いのりの日