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日蓮宗メールマガジン2月号

『おどろき』

令和3年2月。
日蓮聖人がお生まれになって節目の800年をお迎えする月となりました。

この御聖日をお迎えするにあたり、世界各国・全国各地の日蓮宗のお寺では、皆さんと一緒に喜びを分かち合おうと、様々なお祝いの計画が立てられていましたが、感染症の流行に伴いその多くは変更を余儀なくされています。

先を見通し、計画を立て行動することが是とされる世の中で、コロナ禍にあっては思い通りに物事が進んだ人というのは見当たらないかもしれません。

先を見通せない日々。行動の制限。日毎に更新される様々な情報や数字。

修行が足りないと怒られてしまうかもしれませんが、私自身、さすがに心に多少の疲労感を覚えた時、ある一編の詩が目にとまりました。

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もうおどろかないだろう
東京五輪が中止になっても
もうおどろかないだろう
宇宙船が月へ行っても
もうおどろかないだろう
この国に革命がおこっても
もうおどろかないだろう
すべてにおどろきを失ったと知っても

けれどおどろくだろう
妻がまだ自分を愛していると知ったとき
生まれたての赤坊がくしゃみをするとき
テレビを消したあとの静けさの中で
或る日突然おどろく自分におどろくだろう
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これは谷川俊太郎さんの『おどろき』という詩です。1962年10月頃の作品ですので、約60年前の言葉の結晶なわけですが、あまりにも今の世の中に重なって見え、目が釘付けになりました。

と同時に、詩後半の言葉から、身近な人々と交わす何気ないやりとりや視線、新しい命の輝きの中に見出すおどろきの瑞々(みずみず)しさが瞬時に思い起こされ、心にポッと温もりが宿りました。

いま、この文章を読んでくださっている皆さんもどうでしょう。

思い通りにならない現実を前に、おどろきを忘れるほどに心がくたびれていませんか。疲れたな。一体どうしたらいいんだ。もうダメだ。そう思う時も、ありますよね。

そんな時には、テレビやスマートフォンの電源を少しの間消してみませんか。歩く歩調を緩めるのもいいかもしれません。

そっと静かに息を吐き、深呼吸。ゆっくり吸い込んだ空気に、春の気配があるはずです。地域によってはひばりのさえずりも聞こえてくる頃。雪解けも、もうすぐ。静かに耳をすまし、心を澄ませたならば800年前の千葉小湊から、日蓮聖人の産声が聞こえてくるかもしれません。

「大丈夫、冬は必ず春となる」

元気な産声越しに、日蓮聖人が優しく語りかけてくださっていますよ

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

7日 日興上人会
14日 妙日尊儀忌
15日 釈尊涅槃会
16日 宗祖降誕会(宗祖降誕800年御正当)
28日 日什上人会 いのりの日