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日蓮宗メールマガジン8月号

「はじめて」の、、、

何事にも、誰にでも 「はじめて」 はあります。
今を輝く大谷翔平選手でさえ、はじめて野球のボールを投げた日やホームランを打った日など、「はじめて」は誰にだってあるものです。

そんな私も僧侶となって十年。
とうとう一カ寺を任せられる住職に「はじめて」なりました。

境内の掃除やお寺の経理、住職として近隣へのいわゆるお付き合い等、住職となる前とは違い、慣れないながらも「はじめて」づくしの日々を過ごしておりました。

そんな新米の住職となって一か月が経ち、とうとう「はじめて」のその日が訪れようとしていました。
檀家さんから訃報の知らせが届いたのです。
「はじめて」住職として葬儀を行うこととなりました。

僧侶となって十年ですので「はじめて」の葬儀というわけではありません。これまでも何回も葬儀は行ってますが、住職となってからは「はじめて」です。
住職は戒名授与の準備、日程の調整、式全体の流れに至るまで事細かに段取りを組まなければなりません。

サラリーマンのころ上司に「段取り八分の仕事二分」と言われてました。いままで葬儀を何回も行ったと書きましたが仕事二分のところだけお手伝いしていたに過ぎない事を痛感いたしました。

慣れない段取りですので、準備万端かどうかが不安になってきます。当日の持ち物は何度も確認しましたし、式の流れも大丈夫なはずです。ですが一抹の不安が消えぬまま当日を迎えました。

段取りが不安ですと、慣れているはずの仕事二分の方も不安になってきます。
なんとも自信なさげな「はじめて」の住職としての葬儀を迎えてしまいそうでした。

亡くなった方の話をしますとその方とは、毎月自宅の仏壇にお経をあげにいっていたせいもあり、親しくしておりました。亡くなる2週間前にも自宅にお邪魔をしてお経をあげその後、お茶をいただきながら世間話をしておりました。
ガンを患っていて抗がん剤の副作用が辛いとはもらしていましたが、そういう辛いことも笑顔で吹き飛ばすような明るい性格の方でした。私自身も辛いことがあったときこの方と会うと自然と心が明るくなったことは何度もありました。

さて葬儀の時刻が刻一刻とせまりつつあります。不安を隠そうとすればするほど、ぎこちなくなる自分を止めることが出来ません。葬儀場入りして、先ずは御本尊、御遺体御遺影に合掌礼拝しなければと真っ先に会場に向かいました。

するとまず御遺影が目に飛び込んできました。満面の笑みを浮かべた良いお写真で生前の明るい性格をよく表しておりました。次にご遺体に合掌し御題目を唱えていると、不思議と生前の故人の明るさが思い起こされました。葬儀の不安が和らぎ、私のぎこちない姿を優しく笑顔で見守ってくれている感覚になりました。

ぎこちなさや、新米であることは急には変わりません。
ですが、「今の自分を精一杯、出し切ろう」と、「わたしの姿をきっと故人は笑顔で見守ってくれている」と故人の笑顔のおかげで気持ちを切り替えることができました。
葬儀中は不思議と集中することが出来、故人の助けもあり、無事「はじめて」のお葬式を終えることができました。

「はじめて」のことで得られる経験は量り知れません。
この経験を糧に日々、努力していきたいですし、故人の笑顔は一生忘れない宝物です。
「初心忘るべからず」と言います。
初心に得たこの宝物を大切に一人前の住職となれるよう、これからも努力していく所存です。

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

13日 お盆迎え火・宗務院休業
15日 妙蓮尊儀忌
16日 お盆送り火
27日 松葉谷法難会
28日 いのりの日