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日蓮宗メールマガジン9月号

「この地は誰のもの?」

北海道に「ウポポイ」というアイヌ文化の復興と発展を担うアイヌのテーマパークのような施設が御座います。2020年に完成したこの施設ですが、先日初めてウポポイを訪れる機会がありました。
アイヌ民族とは北海道の先住民族であり、自然と共に生き日本語とは違うアイヌ語を使用しています。北海道の地名にもその名残が残っており、アイヌ語に漢字を当てはめて読む地域も多く、難読地名が沢山あります。
私自身は北海道出身でアイヌの歴史について昔に学校で少し習いましたが、僅かな程度の知識しかありません。皆様の中にもアイヌの歴史にほとんど触れる機会がないという方は多いのではないでしょうか。
「ウポポイ」へ行くと、私達の知らないアイヌの歴史を知る事が出来ます。
特に印象深い事は倭人による侵略です。
一つ覚えておいていただきたい事は我々の祖先はアイヌの地を不当に得ている歴史があるという事です。
領土問題はどの時代でも起き、今も世界の大きな問題としてあらゆる所に存在しています。私の身近では北方領土問題があり、70数年たった今も解決していません。しかし、そもそも北海道の土地はアイヌ民族から奪ったものである事を忘れてはいけません。
民族間の紛争、価値観の相違による排他的言動、どうすれば解決されるのか正解がわからない難しい問題は沢山ありますが、これらをみんなで考えていく事が大切ではないかと思います。
その時に大切なのは正しく物事を見る事。
日蓮聖人は『曽谷殿御返事(そやどのごへんじ)』で次のように教示しています。
「法華経(ほけきょう)の題目(だいもく)は一切経(いっさいきょう)の神(たましい)一切経の眼目(がんもく)なり」
法華経はお釈迦様の教えの心意であり、正しく物事を見極める目となるお経です。
仏教では「正見(しょうけん)」という言葉があります。文字通り「正しく見る」という意味ですがどのようなものでしょうか。
それは「事実をそのまま受け止め、偏りなく見る事」いう事です。
人間だれしも自分の理想や思考によって、物事を考えてしまいがちです。都合の悪い事には目を閉じたくなるし、自分本位に考えてしまう事もあるでしょう。
同じ夕陽でも嬉しい時に見るのと、悲しい時に見るのでは見え方が変わりませんか?怒っている時には目に入らない事もあるかもしれません。それらの感情は人間として当たり前に起きる事ですが、夕陽の美しさを素直に感じる心を持ちたいものです。
一時的に感情に揺れる事はあっても、物事を正しく見る事で見えていた景色が少し変わります。
領土問題も本来はその土地に所有者などいないのかもしれません。争わない選択もあるはずです。互いの考えや価値観を慈愛をもって素直に受け止める事が出来るようになれば違った解決方法を選択していく事が出来ると思います。
冒頭に紹介した「ウポポイ」はアイヌ語で「大勢で歌う」という意味があります。
いつの日か人種や言語、国境の隔たりなく、世界中の人々が笑い、歌い、楽しむ事が出来る日が来る事を願っております。

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

3日 日向上人会
12日 龍口法難会
17日 日親上人会
18日 宗祖御入山会
20日 彼岸入り 宗務院休業(20~22日)
23日 秋季彼岸中日
26日 彼岸明け
28日 いのりの日