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日蓮宗メールマガジン12月号

「お寺は今も風景か?」

安倍晋三元首相が凶弾に倒れた銃撃事件以後、
旧統一教会(現 世界平和統一家庭連合)の話題をメディアで取り上げない日はないでしょう。

この話題を耳にした時の率直な私の感想は、

「まだ統一教会ってあるの?」

でした。不勉強極まりない感想ではあります。
しかし、オウム真理教が起こした事件以降、
これほど社会や宗教界を揺さぶる事件もなかったでしょう。

旧統一教会から端を発したこの問題は、

「政治と宗教」「法改正」「宗教2世」

と様々な面がクローズアップされており、既成宗教教団も無関係・無関心ではいられない状況になっていますが、いずれの既成宗教教団から目立った発表はありません。

宗教法人に対する「非課税」や「政教分離」など、各既成宗教教団が慎重な対応をせざるを得ないのは理解できますが、「脱会者」「宗教2世」に対し、何もメッセージを送らないのはどうしてなのでしょうか。

2000年に文芸春秋から出版した『カルトの子 心を盗まれた家族』(著 米本和広氏)は、オウム真理教・エホバの証人・統一教会等の宗教2世、主に子ども達に焦点をあてたルポルタージュでありますが、本書に紹介される身体的、精神的虐待、ネグレクトは想像を遙かに超えるものです。

本書あとがきには

『多くの「カルトの子」たちがトラウマの後遺症に苦しみ、祖父母や元カルトの親たちはおたおたしている。祖父母は相談しようにも対応してくれる機関がなく、元カルトの親たちは自分自身のことすら整理のつかない状態だ。傷ついている子どもの人数は明確ではないが、(中略)数万人単位と推測される。』

とあります。救済が必要とされているのです。

この20年で、カルトや宗教2世の悩みを相談できる団体は増えてます。
トラウマや後遺症に対する心理的カウンセリングができる相談室は、インターネットで検索すれば容易に見つけることが出来ます。
しかし、残念ながらそこに既成宗教教団の名前は見受けられません。

かつて「オウム真理教」の信者の

「日本の寺は風景でしかなかった」

という言葉が取り上げられたことがありました。
1980年代、経済的に豊かになった日本で、既成宗教教団では得られない救済を求め、結果2万人もの信者をオウム真理教は増やしていきました。

「日本の寺は風景でしかなかった」という言葉は、オウム真理教に入信した2万人にとって既成仏教教団は何ら役に立たなかったことを意味するものであります。

また、「風景」という言葉から考えるに悩みを解決できる「場所」として既成仏教団体が認識されなかったとも解釈できるのです。

「お寺は今も風景か?」

そう自分自身に問いかけます。
お釈迦様は全ての人は幸せになれるとおっしゃいました。
苦悩をなくし自らを向上させ幸せになれる場所、
それがお寺です。
いま改めて問われています。

「お寺は今も風景か?」と

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

8日 釈尊成道会
23日 宗務院御用納め
28日 いのりの日