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日蓮宗メールマガジン9月号

「供養の心」

日本にはお盆やお彼岸といった先祖供養の行事が御座います。他にも年回忌といった法事も供養の場です。旅立った故人を偲び、手を合わせる文化が脈々と受け継がれ、多くの方が供養の心を持っていらっしゃる事はとても喜ばしく思います。

私事ですが先日祖母が亡くなり、まもなく百箇日忌を迎えます。祖母は長寿であり、行年99歳の長逝であったと思います。
生前は介護を必要とし、この数年間は特別養護老人ホームに入所しておりました。
体調を崩し今年の1月に病院へ移りましたが、その数か月後には逝去致しました。入院してからは、直ぐにでもお見舞いに行きたかったのですが、このコロナ禍では面会の許可もなかなか下りず、亡くなるまでには結局1度しか会うことは叶いませんでした。
祖母は私が生まれた時には足腰が悪く、一日のほとんどをベッドかソファーで過ごしておりました。昔は畑仕事等も一生懸命やっていたそうですが、晩年は出かけるといえば病院か散髪くらいで、それ以外の時は家で過ごしていました。
コロナ禍がなければもっと会いに行けたのに寂しい思いをさせてしまったな、もっと車に載せて色々なところへ連れて行ってあげられればよかったかなと、後悔の念が今になって沢山出て参ります。
祖母は足が悪い中でも毎日朝のお勤めには出てきて一緒にお経をあげていました。そして僧侶である孫の私を常に応援し支えてくれる、そんな信仰熱心で優しい人でした。
今でもふとした時、何か迷った時や困った時には心の中で祖母が励ましてくれ、まだ祖母が生きているのではないのかという錯覚さえ感じる事があります。
近しい人が亡くなるという悲しみはなかなか癒えません。しかし、残された我々がその故人を忘れなければいつまでも心の中で生き続けていくのだと思えました。
私が苦しいときには励まし、困ったときには導いてくれる祖母は仏様となって私の心の中に住み着いているのだと感じています。だからこそ、いつまでも供養の気持ちを持とうと思えるわけです。

日蓮聖人は『報恩抄(ほうおんじょう)』で次のように御教示されています。
「花は根にかへり 真味(しんみ)は土にとどまる」

この一節は日蓮聖人の師である道善房(どうぜんぼう)への追善としてあてられた御遺文です。
花が咲き終わったら、その栄養が土の中の根に戻り残るように、法華経の功徳は亡くなった道善房の身に集まる。自らを育んでくれた恩人に対し、感謝の心をもち、報恩の心で供養する大切について説かれています。
私たちの命は、両親から祖父母、そしてご先祖様からいただいた命であります。
先祖供養はよく一本の木に例えられます。即ち先祖は木の幹や根であり、子孫はその枝葉です。根にしっかりと栄養を与えなければ枝葉が栄える事ありません。また枝葉から取り込んだ養分も根に蓄えられ、さらに木全体が大きく成長します。
ご先祖様と子孫は切っても切れない関係であり、私達の命は脈々と受け継がれて来たご先祖様からの命のリレーによるものです。ご先祖様の存在なくして私たちの存在はあり得ません。多くの人から恩を受けて、育まれてきた命であることは忘れてはいけません。感謝と報恩の気持ちで供養をしていきたいものです。

【お知らせ】
日蓮宗宗務院伝道部より、今月の予定をお知らせ致します。

3日 日向上人会
12日 龍口法難会
17日 日親上人会
18日 宗祖御入山
20日 彼岸入り 宗務院休業(20~22日)
23日 秋季彼岸中日
26日 彼岸明け
28日 いのりの日