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心の散歩道

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無尽蔵(むじんぞう)

週刊誌にこんなことが載っていました。
つい飲み過ぎて、あるいは残業が長引き、終電に乗り遅れた経験を持つ人もいるでしょう。郊外の家に帰るにはべらぼうなタクシー代がかかります。そんなビジネスマンのために「終電が出た後、定期券を提示すれば、系列ホテルに半額で宿泊できる」というものです。大阪に本社のある電鉄とホテルの提携です。
電鉄側の言い分は「長引く不況の影響で、どこも通勤定期券の売り上げが落ち、なんとか定期券に魅力を持たせ、購入客を増やしたい」とのことです。ホテル側も不況の圏外にはありません。両者の思惑が一致したのです。これが思いの外、好評なのだそうです。まずはめでたしと言ったところですが、そうは問屋が卸しません。
この電鉄会社の系列にタクシー会社もあり、そのお客さんが減ってしまったのです。終電がなくなって、タクシーで帰宅していたお客を、同じ会社どうしで奪い合いをしてしまったのです。
風が吹けば桶屋が儲かる、ではありませんが、世の中、どこかが儲かればどこかが損をするのです。それが世間の常識です。
ところが、そうでないものもあります。太陽の光はどうでしょう。誰にも分け隔てなく平等にふり注いでくれます。誰かがたくさんの太陽の光を奪ったからとて、自分の太陽の光が少なくなったなんてことはありません。求めようとすれば誰でも同じように恵んでもらえます。
仏さまの慈悲がそうです。あの人の恵の大半をあげたから、あなたは半分で我慢しなさい、なんてことは絶対にないのです。そんなちゃちなものではないのです。汲めども汲めども尽きない無尽蔵なのです。ただ、それを受け取る気持ちがあるのかないかだけの違いです。そこが世間の法と仏様の法は違うんです。
みんな幸せに!それが仏さまの大きな願いです。