
生き方を変えたことば
磯田道史さんといえば、有名な歴史学者で大学の先生もされています。
堺雅人主演の映画「武士の家計簿」の原作者で、NHK・BSで「英雄たちの選択」という歴史上の英雄を扱った番組の進行役を務められている方、といったらおわかりでしょうか。弁舌さわやか、大変にわかりやすい語り口ですから、ついつい聞き入ってしまいます。お蔭で、歴史ファンが多くなっているそうです。
磯田先生は岡山の出身で大安寺高校の卒業だと最近知りました。子供のころから興味のあることに対する執着は一筋縄でなく、小学校の時に弥生式土器を自ら窯をこしらえてまで再現したり、竪穴式住居を庭に作ったりしたそうです。高校時代には自宅でご先祖の書付けを発見、この内容を知りたいとの一心で「くずし字解読辞典」を購入し、3か月で7割、高校3年時には大学の先生レベルまで古文書を読めるようになったそうです。まさに「栴檀は双葉より芳し」です。
大学時代は、授業時間以外は図書館で、一週間のテーマを決めて食事時間も惜しんでの読書三昧、ついには貧血で倒れ救急車で病院に運ばれたというエピソードをお持ちです。
そのような磯田先生には、自らの生き方、考え方を見直すきっかけとなる一冊の本との出会いがあったそうです。それは、相対性理論で有名なアインシュタインのエッセイ集で、その中の言葉、「人間は得たものではなく、世に与えたもので評価されるべき」というものでした。「お金や権力、知識など、その人が得たものに人々がひれ伏してしまうから世の中がよくならないのだと気づきました。知識を得るだけに没頭してきた自分が恥ずかしく、得た知識を世の中に還元しなくてはと思えてきたのです」と当時の心境を語っておられます。
磯田先生の学者さんらしからぬ雰囲気はこのような考えによるものなのですね。得心しました。