
大曼荼羅ご本尊
一年に一度、お寺で代々お護りしてきた大曼荼羅ご本尊の開帳法要を行います。
江戸時代、参勤交代のおり、京都の道具屋でこのお曼荼羅を見つけたお檀家さんが求めてきたものだとの言い伝えがあります。このことを裏付ける記録が残っていないか探しましたが残念ながら見つけることはできませんでした。そこでお曼荼羅購入のころの様子を勝手に想像してみることにしました。箱書きに文政8年正月とありますから、時は江戸時代の後期、192年前のことです。
軸装されたお曼荼羅は縦2メートル半、横幅が1メートル20センチあり相当に大きなものですから、参勤交代の途中に購入したとは考えられず、一度岡山に帰り、時の住職や主なお檀家さんと話し合い、お金の工面もして、再び京に上り求めたと考えるほうが自然な感じがします。もちろん一人で運ぶことは無理でしょうから何人かで交代で運び持ち帰られたはずです。
吉川弘文館の『日本史年表』によりますと、このころ全国人口調査が初めて行われていて日本の人口は2720万人だったようです。現在の4分の1、少ないものです。「西国にコレラ流行」とありますから、もしかしたらお寺の近辺でもコレラ患者が出たのかもしれません。「諸国旱害」との記事も見られますので作物の被害も心配されます。そのような中、いや、もしかしたらそのような状況だったからこそ、一大決心してこのお曼荼羅を求められたのかもしれないとも想像します。
いずれにしても、およそ200年前、お寺の御宝前にこのお曼荼羅が初めて掲げられたとき、大勢のお檀家さんが集い、我が寺にやってきた宝物を、見上げるように拝み拝されたことはまちがいないはずです。今年も、当時の先輩お檀家さんの篤い志がこもったお曼荼羅をお開帳させていただきました。想像をめぐらせるほどに、一層親しみが増してきました。