心の散歩道

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2017年

『偶然短歌』

『偶然短歌』という出版物があることをある雑誌の記事で知りました。普通の文章の中に偶然に五七五七七の短歌のリズムの文章が含まれていることを発見した人が、ウィキペディアの文章中からその部分を抜き出して本にまとめたものだそうです。

例文がいくつか載っていました。「踊り念仏は、鎌倉時代には一遍上人が全国に広めたが、一遍や同行の尼僧らは念仏で救済される喜びに衣服もはだけ激しく踊り狂い、法悦境へと庶民を巻き込んで大ブームを引き起こした」という踊り念仏を説明した文章の中に「念仏で/救済される/喜びに/衣服もはだけ/激しく踊り」と偶然に五七

五のリズムが刻まれていて、それがまた見事に短歌になっています。

プログラマーである著者が自ら開発したプログラムを使ってウィキペディアの文章から5000首の短歌(?)を取り出し、その中の100首を選んで『偶然短歌』という題名で本にしたそうです。

こんな面白い視点で文章を読み、プログラムを作れるという特別な能力があるとはいえ、本にまでしてしまう、その情熱には感心してしまいました。

例文に次のような歌もありました。「その人の/読む法華経を/聞きながら/眠りについて/そしてそのまま」意味深そうな、余韻がある、最初から短歌として作ったのだろうかと思ってしまうほどの出来栄えです。しかし、「そしてそのまま」のあとが気になります。この歌は櫻間伴馬という能楽師について書かれた文章中の言葉ということなので調べてみました。

「6月に入ってからは己の死期を悟り……、同月24日はかねて信仰していた加藤清正の縁日であり、信心仲間に代わりにお参りに行ってもらった後、その人の読む法華経を聞きながら眠りについて、そしてそのまま静かに息を引き取った」とありました。

見事な最期を迎えられた信仰者がおられたものです。