心の散歩道

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2022年

無言館の絵

「海も、空も、こんなに美しい。

それなのに人間はどうして戦争なんかするんだろう」

田舎に住み、自然に接しながら絵を描く生活を夢見ていた椎野修さんは、太平洋戦争出征前に親子3人で出かけた公園の野原に寝転んでこうつぶやきました。

椎野さんは、昭和13年東京美術学校(現・東京芸術大学)を卒業後、小学校勤務の傍ら精力的に絵を描き、数々の美術展で賞を受けました。昭和19年召集を受け、翌年3月ビルマにて戦死しました。享年31歳でした。

長野県上田市の郊外に「無言館」という私立美術館があります。平成9年に開館した新しい美術館ですが、この美術館は「戦没画学生慰霊美術館」として生まれた特殊な施設です。

第二次世界大戦に出征して亡くなった画学生や若い画家の遺作を集めた美術館であり、椎野修さんの絵もその展示作品の一つです。今回、瀬戸内市美術館にて巡回展が開かれ、作品の一部を見ることができました。

ほとんどの画家は20代から30代です。作品と共に当時使っていた画材や携帯スケッチブックも飾られていました。戦地にあっても可能な限り絵筆が止まることはなかったようで、南洋の島の風景を描いた作品も残されていました。

あと5分、あと10分、
この絵を描きつづけていたい。
生きて帰ってきたら、
この絵の続きを描くから

と言い残して、昭和17年出征した日高安典さんは、昭和20年、27歳の若さでルソン島にて戦死しました。

ウクライナとロシアの間で戦火が交えられ、民間人を含めて多くの戦死・戦傷者が出ていると報じられています。突然、未来が閉ざされてしまう不幸に胸がいたみます。