
お坊さんでしょ!
お寺の周りは田んぼや畑が多いんです。ですから、よく畑でできた新鮮な野菜をお檀家の方やご近所からいただきます。有り難いことです。
でも、どの野菜も採取時期がほぼ決まっているので、時に重なることがよくあります。大根の時期には大根が、ほうれん草の時期にはほうれん草が、タマネギの時期にはタマネギが、というふうです。とても我が家だけでは食べきれないので、残って腐らしては勿体ないと、時に市街地の方などにお裾分けをします。
新鮮なうちにと、早速、選別を始めます。それを見た家内が、何をしているのかと聞きます。我が家でいただく分として出来の良さそうなもの、とりわけ新鮮なもの、そうでない差し上げるぶんを選んでいると答えました。
すると家内の顔は険しくなり、そんな卑しいことをしてはいけないと文句を言うのです。仕方なく大小の野菜を区別することなく均等に分けました。
自分が作ったものではないにしても、いただいたものは自分の物。自分に選別する権利はあるだろうと思う気持ちがありました。
だが家内は、自分だけ得をすればいいという行為が好きではありません。そして、放った言葉「お坊さんでしょ!」。これまでも、それを実行していた場面を、いくつも思い浮かべることができます。
後日、あのように新鮮で大きなそら豆をいただいたのは初めてだ。おいしかったと礼を言われます。その笑顔を見て、家内の言うとおりにしてよかったと実感しました。
お坊さんを揶揄した古歌に
「人々に 欲を捨てよと教えつつ 後から拾う 寺の住職」
というのがあります。そんなお坊さんにならないよう心がけてきたつもりですが、まだまだ修行は続きます。