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心の散歩道

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2024年

心のこもった法要

お寺で法事がありました。ご主人の七回忌の追善法要です。奥さんからは3人出席しますとの連絡がありました。コロナ禍以後、法事に集まる方も少なくなり、このような少人数のケースも珍しくありません。20人を超える親族が集まる賑やかな法要もありますが、以前ほど多くはありません。

当日、法要の開式時刻よりもずいぶん早く奥さんが沢山の荷物を手にお寺にお参りになりました。お花に果物にご主人の好きだったお菓子などを用意されています。でもお供え物を並べている内に肝心なものがないことに気づきました。お位牌を自宅に忘れてこられたのです。お寺での法事ではこういうことが時々あります。

息子さんはまだ到着していませんので、息子さんに連絡してお位牌を自宅から持ってきてもらえばと言うと、「実は、息子は仕事の都合で来られなくなって、今日は私1人の出席なんです」とのこと。奥さんは「お位牌なしでもいいです」とはおっしゃいますが、そういうわけにもいきません。幸い開式時刻までまだ間がありますし、ご自宅はお寺から車で10分程度とそれほど遠い距離ではありません。奥さんを私の車に乗せて、自宅までお位牌を取りに帰ることにしました。

奥さんはたいへん恐縮されていましたが、車中で話を聞くと、今日は息子さんがいないのでバスでお寺までお出でになったとのこと。自宅からバス停までは自転車で、お寺近くのバス停から道に迷いながら歩いて来られたとのことです。バスの本数も多くないですから、たいへんだったと思います。

広い本堂に私と奥さんの2人でしたが、無事に七回忌の法要も終了しました。お位牌をしまいながら、ふと見ると奥さんの目には光るものがにじんでいました。「私が泣いているのではないんです。浄土で主人が感謝して泣いているのが、私の目からあふれているだけなんです」。そうおっしゃると奥さんは涙をそっと拭いました。