
初めてのお説教
我が人生の恩師のお一人と思っていた方が引退されることになり、住職交代の式典に参列してきました。20代のころに務めていた宗務院(宗門の本部)の課長さんで、まさにスーパーお坊さんでした。お経、お話、文章、全てが一流、書も素晴らしく、今回の記念品に作品集を頂きました。
式中、あることを思い出していました。課長さんは、愛知県のお寺での法話を頼まれておられたのですが、公務が重なり出講が叶わなくなられたのです。
「あなたは亡きお上人の分骨にインドに一緒に行ってくれた。その時の話をすればいいのです。代わりに行ってください」
そのお寺のご住職は一年半ほど前に亡くなられ、ご遺言に従い、お信者さんたちがお釈迦さまご入滅の聖地、インドのクシナガラへ分骨の旅を計画され、亡きご住職の信頼が厚かった課長さんに導師を依頼され、そのお付きとして私も帯同したのでした。
とは言っても、私は人前で法話をした経験はゼロ! 専門の勉強もゼロ!何度も何度もお断りしたのですが、ついには断り切れなくなり引き受けました。時間は1時間半、インドの話だけで持つはずもなく、取って付けたような話は当然見事に失敗に終わりました。後で聞けば、そのお寺は当代一流のお説教師さんが多く出講されるお寺とのこと、はなから私ごときが行くようなお寺ではなかったのです。
しかし、私にとって、この大恥があったればこそ、その後、真剣に法話の勉強に取り組む機縁になりました。今思い出しても顔が赤くなりますが、ありがたい経験だったと、式中に思い返していました。