心の散歩道

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2016年

貧乏神

ある村で、若者が毎日真面目に働いていました。ある日、痩せこけて、肌の色は青ざめて、手になぜか破れた渋団扇を持ち、悲しそうにしょんぼりとした小男が門口に立ちました。若者は、気の毒になり、家の中に入れてやりました。その男は感謝するでもなく、毎日ブラブラしながら、いつも天井の梁の上に寝転がって、下を見ていました。若者はその男が来てからは、仕事をする気が起きなくなって、一緒にブラブラしだしました。そして、貧乏になっていきました。

その村にその若者を好きな若い娘がいました。「急に働かなくなった」ということを聞いて、心配して若者の家に行って「一緒に仕事をしましょう」とお嫁さんになりました。

本当は働くことが好きだった若者は、若いお嫁さんと一緒に仕事をしだしました。次第に生活が楽になり、お金も貯まりだしました。

ある日、梁の上に寝転がっている小男が「あなた方、もうこれ以上本気で仕事をしてくださるな。わたしがこれ以上この家に居れなくなります。実は、私は貧乏神なのです。うまいこと仕事をしなくなったので、居心地がいいなと思っていたのに」と涙声で、二人に言いました。

「いやそんなことは気になさらずに、どうぞ邪魔になりませんから、家に居てください」と夫婦は言い、怠けずに、しっかり働いて、美味しいものを食べて、休む時はゆっくり休みました。そして、貧乏神にも同じようにしてやりました。痩せこけて、青白かった貧乏神が、だんだん太って肌の色つやもよくなってき、一緒に働きだしました。

ある日、福の神の大黒さまが、この家にやって来ました。「骨身惜しまず働く家には、福の神が住むことになっている。この家にはわしが住むことにした」と家の中を見ると、貧乏神が大黒さまのように、なっていました。「これは、先客がござったか」とあとからの大黒さまは帰っていきました。