
息子が教えてくれたこと
「明日は日曜日だからドライブに出かけよう!」
高校生の息子さんと約束した父は、次の日に出かけるための準備をしていました。そこへ会社から電話が入り、次の日に急な仕事が入り、どうしても出社して欲しいと頼まれました。父親も息子さんとの約束があり、明日の日曜日だけはどうにかならないかとお願いしました。しかし、上司からどうしてもとのことで止む無くドライブの約束を断ることにしました。
楽しみにしていたドライブが取り止めになり、がっかりした息子さんは友人宅に遊びに出かけました。いつも仲良くしている友人なので両親も安心して送り出しました。その日は帰りが遅くなりましたが、たまには遅くなることもあったので、家族は先に休みました。
翌日、警察から連絡が入り、友人とバイクで買い物に出かけている途中で事故に遭い病院に運ばれていることを知らされました。
両親は急いで病院に駆けつけましたが「息子さんはほぼ即死に近い状態で病院に運ばれてすぐに息を引き取った」と告げられました。
それから20年が経ちました。息子さんが亡くなってしまった寂しさと「仕事さえ断っていれば息子を失うこともなかった」と何度も自分を責めたそうです。悔やんでも悔やみきれない、そんな日々が20年続きました。最近になり、やっと息子さんのことを冷静に考えることができるようになったそうです。
「亡くなった息子は私たちにいろんなことを教えてくれました。一番は、息子が亡くなるまで手を合わせることなど無かったのですが、息子が手を合せることを教えてくれました」と涙ながらに父親が話してくれました。
ご両親は20年経った今でも、月命日には必ずお墓に参られています。悲しみに耐え、多くを語らず静かに手を合わすご両親の姿に、息子さんが穏やかに微笑んでいるように感じました。