心の散歩道

心の散歩道

2019年

ウグイス

3月の終わりに鳴き始めたウグイスが6月になっても謡の練習を続けています。大分上手になったが、「ホーホケケキョ」とまだ変調のように感じます。谷の向こう側は正調の鳴き声で返歌してきます。「君は下手だな」と言ってやりたいが生憎ウグイス語を知りません。

数年前のことですが、本山の貫首様とウグイスの鳴き声について話したことがありました。「私には、『奉法華経』また『宝法華経』と聞こえるんだよ」とおっしゃいました。「法華経を奉る・法華経は宝物と富士山の麓のウグイスは鳴くんですよ。春になると法華経は素晴らしい教えですよ、法華経を大事にせよといって、野山を唄い布教をしてくれているんですよ」と。貫首様が真顔でおっしゃったので、「強い信仰をお持ちの方だ」と思わず合掌してしまいました。私も日蓮宗の僧侶なので感服しきりでした。

二昔前、師父の本葬儀が行われた6月半ば、準備のために本堂の扉を外していたときのこと、一羽の鳥が堂内に飛び込んできました。天蓋や憧旛にぶつかりながら、逃げ場を失っていました。浅黒い緑褐色の鳥でした。堂内にいた誰かが、「ウグイスだ」と叫びました。外は降りしきる梅雨の雨。雨宿りのつもりで飛び込んできたのでしょうか。鳴き声を発すること無く、しばらくの間右往左往していたがいつの間にか姿が無くなり、外で、「ケキョケキョケキョ」と谷渡りの声が耳に届きました。不思議な出来事でした。私には師父が最期の別れを告げに来てくれたとしか思えませんでした。

親しくしていたお上人が亡くなったとき、師父が打った弔電を思い出します。

「あー惜しや
も一度聞きたや
ホーホケキョ」