
辛かろう 悲しかろう
金子みすゞさん(1903~1930)は、山口県仙崎の海辺で暮らしていました。わずか26歳で亡くなりますが、500編もの詩を残しています。「私と小鳥と鈴」「こだまでしょうか」など多くの方に読まれた詩もありますが、こんな詩も残しています。
大漁
朝やけ小やけだ 大漁だ
おおばいわしの大漁だ
はまは祭りのようだけど
海のなかでは 何万の
いわしのとむらいするだろう
大漁だと街の方が喜んでいる時に、こんなことは誰も思わないでしょう。でも、金子みすゞさんは海の底の様子を思い浮かべて涙しています。誰も思わない弱い立場のことや辛くても何も言えない立場のことに目を向けているのです。こんな詩も。
積もった雪
上の雪 さむかろな。
つめたい月がさしていて。
下の雪 重かろな。
何百人ものせていて。
中の雪 さみしかろな。
空も地面もみえないで。
雪に覆われた風景を見て、私なら「今日は別世界みたいに綺麗」と飛び上がり、新雪の中を歩き回るでしょう。金子さんの見方は違います。積もった雪に目を向けて、表面の雪は寒いだろうな、底の雪は重さに耐えているのかなと。でも中の雪のことも、外の空も底の地面も見ることできず淋しいだろうなと。
金子みすゞさんの感性に驚きます。この視点を見習わねばなりません。