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今月の聖語

今月の聖語

方人よりも強敵が人をばよくなしけるなり

『種々御振舞御書』/
建治元年(1276)聖寿54歳 

=逆境=
 
極楽とは「楽の極み」と書くように、そこには悪人もいなければ苦しみもないといわれます。一方、私たちが生きるこの世界を娑婆と呼びます。忍土とも表現されるように、まさに苦しみが充満し、それに堪え忍ぶ世界です。だからこそ苦のない世界を望みます。しかし、翻って考えた時、苦のない所に自己の成長や進歩があるでしょうか。
アスリートたちを見て下さい。なんの苦もなく栄冠をつかんではいないはずです。逆境を乗り越えたからこそあの笑顔が生まれるのではないでしょうか。
 
日蓮聖人ご遺文
『種々御振舞御書』
本書は聖人の4つの手紙を先師が一つにまとめたといわれています。蒙古襲来の気配の中『立正安国論』での諫めを用いない幕府などの有り様を糾し、さらにご自身の度重なる法難の様子を述べ、最後に身延での生活の様子を語られています。
この一節は方人、つまり味方よりもむしろ自分を迫害する強敵こそが信仰を育ててくれる恩人であると説かれています。いかなる苦しみにも屈するなと励まして下さっているのです。
建治元年(1276)聖寿54歳