じつは身近な仏教用語

有頂天

【うちょうてん】

【s:bhava-agra】

相手に褒められたり、喜ばしい事があった時に「有頂天になる」、また喜びの最中にあり、周りが見えていない状態の人を指して「あいつは有頂天になっている」と表現する慣用句があります。
この〈有頂天〉とは、元来は天のなかの最高の天の意味を表します。
〈有頂〉の原語[s:bhava(バヴァ)-agra(アグラ)]は有(bhava-存在)の頂き(agra)を意味し、最高の場所を指します。
〈天〉は六道輪廻の天界を意味すると同時に,そこに住む者をも意味します。「有頂天に登りつめる,絶頂をきわめる」の意から転じて、喜びで夢中になることを「有頂天になる」というようになりました。
〈天界〉というと、とても良い状態のように感じますが、実はまだ迷いの世界である六道の中です。
次の瞬間、地獄に落ちるかもしれませんし、餓鬼界に往くかもしれません。
〈有頂天〉になっている状態をイメージしてもらうと分かりやすいですが、喜びによって気分は高揚していますが、その足元はフラフラで不安定な状態です。まさに「心ここにあらず」ですね。
〈有頂天〉の時こそ、足を掬われない気を引き締めていきましょう。

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