甘露
サンスクリット語のアムリタ[s:amṛta]の訳語で、アムリタとは不死を意味する言葉です。
古代インドの『リグ・ヴェーダ』※1には、それを飲めば不死が得られ、光となり神となると云い、soma(ソーマ)酒※2を賛美する一節があります。
そこで、本来はソーマ酒をアムリタと云ったようです。
仏教では〈さとり〉を指す涅槃をアムリタとも云います。
甘露の法門、甘露門などは〈さとり〉への入り口と意味を持ちます。
甘露飴、甘露煮、甘露梅など、甘さや甘辛さを表現する言葉として日常生活にも浸透しておりますが、本来の意味は〈苦〉が消滅した、平穏な心の状態を表しています。
『開目抄』の一説に「毒薬変じて甘呂となる」とありますが、辛い体験や苦しい体験も、延いては自分の心の栄養や糧となる、という意味からもわかる通り、ただの甘さだけを表す言葉ではないとご理解頂けると思います。
※1 アーリア人が伝えたインド最古の聖典ヴェーダ文献4種のうちの一つ。神々への讃歌を集大成したもので、古代インドの宗教を知るうえで最も重要な文献。
※2 リグ・ヴェーダの中で、神々の食物や飲料として記されます。
飲み物としてのソーマは、ソーマという植物から作られ、ヴェーダの祭祀で用いられる飲料です。ヴェーダに記されるsomaと、祭司で用いられる飲み物としてのソーマは、しばしば同一視され、みつのように甘く,万病の薬とされています。