
昭和16年夏の敗戦
今年は、昭和20年の第二次世界大戦終戦から80年となる節目の年です。日本は敗戦国となりました。
『昭和16年夏の敗戦』とは、作家・猪瀬直樹氏(元東京都知事)の著書の題名です。
昭和16年は開戦の年ですが、この年の夏に、つまりは開戦前に対米戦争を始めた場合どのような結果になるのか机上演習が行われたそうです。その結論は「日本必敗」でした。
この机上演習を行ったのは「総力戦研究所」、内閣直属の機関です。メンバーは内務省や大蔵省(当時)を始め各省庁の30歳過ぎたぐらいの若手エリート官僚、陸軍、海軍、満州国からも、さらには新聞社などの民間企業からも俊英が集められました。
総力戦ですから、武力戦はもちろん思想戦、経済戦、国内政策、対外政略とあらゆる観点から研究しました。〈影の内閣〉が作られました。各省庁のエリート官僚ですから、最新の極秘資料も手に入れることができました。
その結論は非常に具体的です。
「12月中旬、奇襲作戦を敢行し、成功しても緒戦の勝利は見込まれるが、しかし、物量において劣勢な日本の勝機はない。戦争は長期戦になり、結局ソ連参戦を迎え、日本は敗れる」というもので、原子爆弾の投下は想定外だったにしても、他は実際の戦争の推移をほぼ言い当てています。
この結論は昭和16年8月27日に時の近衛内閣の閣僚全員の前で発表されました。
結果は「机上の空論」に過ぎない。「戦というものは、計画通りにはいかない。戦争はやってみなければわからない。意外裡なことが勝利につながっていく」というもので、この年の12月8日に太平洋戦争は始まりました。
昭和20年6月29日の岡山空襲で亡くなった方は1737人、一説では2千人を超すとも言われます。
防げなかった戦争ではなかったのならば、悔しい限りです。