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日蓮聖人の生涯:お釈迦さまの教えを受け継いだ法華経の行者―日蓮聖人

第1章 なぜたくさんの仏教宗派がありながら、世は乱れるのか?

日蓮宗の宗祖、日蓮聖人は、貞応(じょうおう)元年(1222年)2月16日に現在の千葉県鴨川市に、漁師の子として生まれました。

日蓮聖人が生きた鎌倉時代は、飢饉や流行り病、天災などが相次ぎ、また幕府と朝廷の権力争いが続く混乱した時代でした。そんな中、幕府や朝廷の後ろ盾を得て多くの仏教宗派が教えを広めます。ところが、世の中の混乱は一向に静まりません。為政者は加持祈祷に頼りっきりで民衆の生活を改善する努力を放棄し、一方の寺院は自らの特権にしがみつくばかり。もはや人々は現世の救いをあきらめ、来世に望みを託すしかないというありさまでした。

そんな現状に、この地域の名刹・清澄寺で出家し、勉学に励んでいた若き日の日蓮聖人は疑問を持つようになります。「人を幸せにするはずの仏教宗派がたくさん咲き乱れているのに、なぜ世の中は更に乱れるばかりなのであろうか。そもそも一人のお釈迦さまの教えであるはずの仏法に、なぜこれほど多くの宗派が存在し、その優劣を争っているのだろうか――」。そして、本当に人々を救うことのできる、真の仏法を求める旅がここから始まるのです。

虚空蔵菩薩への祈り/画:植中直斎

このとき、世の安穏を実現する教えを捜し求めていた日蓮聖人は、仏法の全てを知り尽くしたいという使命感にあふれていました。そのことは「私を『日本第一の智者』となし給え」と21日間、不眠不休で寺の本尊・虚空蔵菩薩に願を立てたというエピソードからも伺えます。